解放軍がマケドニアを攻めるにあたって、編成の主管は決定されている。

　大将にアリティア王子マルスが就くのは恒例通りとして、その下にミネルバを始めとする解放軍マケドニア勢千五百、加えてオレルアン勢が一万五千から二万入る予定である。

　予定、というのはマルスとオレルアン王弟ハーディンの間で綱引きしているために、範囲づけることで途中経過にしているに過ぎない。

　アカネイアにしろ、アリティアにしろ、主権を取り戻そうとする人間がいる場合はその国の王族の意向が最優先された。アカネイア王女ニーナは自分が選んだ代理役のマルスに王都パレスの解放を委ね、マルスはアリティア勢主導で国土を取り戻した。

　今回も前例に倣ってミネルバの意向をできるだけ立てるよう、マルスは心がけるつもりだった。

　しかし、マケドニアはオレルアンを攻め、占領した経緯がある。その借りを返すのだとオレルアン勢は息巻き、その主張に折れる形でマケドニア戦の主力に据えることになった。

　というのも、これまで解放軍は目を見張るほどの速さで帝国の版図を塗り返してきたが、その中で若いアリティア騎士の多くが華々しい戦績を上げているのに対して、オレルアンはアカネイアに次ぐ国力を持っているのに、控えの戦力に当てられる機会が少なくなかった。

　中でも、アカネイア解放の戦いでは陽動役を甘んじて受けた。ニーナがそれに報いるべく、ハーディンに聖騎士の位を与えたものの、やはり戦場の事は戦場で晴らしたいという気持ちがオレルアン騎士にあったのだろう。そして、鬱憤を晴らすには、マケドニアは格好の相手すぎた・・・。

　最低でも解放軍マケドニア勢の十倍という数はあまりにも多い。とはいえ、アリティア騎士を出すには弊害があり、アカネイアでは事がややこしくなりかねない。有り難い事に、アカネイアはマケドニア攻めにあまり積極的ではなかったが。

　敵地へ最初に上陸する危険を考慮し、マルスは第一陣の兵数の上限を二万五千と決めている。最低で千五百、最大で六千五百の中で残りの人選を詰める必要があった。

　地上はオレルアン勢で相当の役割を求められるし、空はミネルバとペガサス三姉妹で解放軍の持てる精一杯の戦力である。

　この場合の補完要素として最適なのは魔道。加えてもどの方面からも文句はつかないだろう。

　マルスとしては、自身の二千以外にもアリティアの将を入れたい。だが、それではオレルアン騎士の面子を潰しかねない。

　一方、解放軍マケドニア勢の事も気がかりだった。構成の大枠をミネルバに知らせた時、オレルアンがマケドニアに敵愾心を持つのは仕方がない事だと言っていたが、それで済ませてしまいたくなかった。ドルーアを倒す正義をもって兄王ミシェイルに戦いを挑むのに、この有様ではあんまりだとも思ったのである。

　どうにかして両方を解決できないものか。マルスは暇さえあればその事を考えるようになった。