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(あとがきにかえて……昔の話) 「悪趣味だ」 ブリギッドは、ありがた〜い聖遺物であるはずのイチイバルの印象をその一言で片付けた。 その場――オーガヒルのある村の近くで火を囲んでいた一同は顔を見合わせる。 「悪趣味……というと、どういうことでしょう、姉様」 「まだあんたの姉さんって決まったわけじゃない」 ピシャリと言ったブリギッドに、エーディンは息を飲む。 ユングヴィの公女である事の記憶を欠落している、瓜二つの女性は間違いなくあのブリギッドなのだ。 それを証明するためにイチイバルを出したのだが……。 「悪趣味は悪趣味だと言っているんだ。海賊でも十二聖戦士のことくらいは知ってる」 いきなり話が飛んだことで、再び一同は顔を見合わせる。 それを無視してブリギッドが続けた。 「あんた達の軍に、坊ちゃん刈りの騎士がいただろ。こげ茶の髪のが」 その言葉に、同じ坊ちゃん刈りのフィンが嫌な顔をした。彼の主君の事を言われているのは自明の事である。 「そいつが、さっき光ったんだ。槍、振り回しながら」 「……それが?」 この質問者はエスリンだった。 幸か不幸か、あるいは何故かキュアンの姿はなく、その代わりに彼女の隣にはシグルドがいた。 が、どうもこのところの出来事のせいで、ぼんやりとどこかを見ていることが多い。簡単に言えば添え物状態だった。 「それ、キュアンの事でしょう? それなら、兄様……この人もそうなるだろうし、あなただって」 エスリンが控えめに指さすと、ブリギッドは顔を真っ赤にして首を振った。 「ふざけるな! 「見せ物なんかじゃないわよ、それでもあなたは普通なんだから」 「普通の人間は光らない! あんた、自分で何言ってるかわかってるのか」 「ちょっと待った」 申し訳なさそうに手を上げたレヴィンが話を止める。 ブリギッドは首だけを動かして真顔になった。 「なんだ?」 「あの、さ。言い忘れたっていうか……言い損ねたんだけど、その……俺も」 「俺も?」 「……光るかもしれない」 「じゃあ、一緒になるって話は無しにしよう」 ブリギッドは間髪をいれずに別れ話を切り出した。 飛躍することこの上ない。 すでに、この話についていけるのは当人同士だけだった。 「やっぱ、光るのは駄目かな」 「駄目だな。光るっていうのも問題外だけど、お前、嘘ついただろ」 「ついたか?」 「王族なんだろ、光るってことは。そんなこと言ってなかった」 ブリギッドの中では光る=王族直系という図式が成り立っているようだった。 「海賊と王族じゃあ釣り合わないし、色々とやりづらい」 「……そうといえばそうかもな。もし、本当にエーディンの姉さんだったら、それもそれで厄介だし」 「とりあえず、お前が光る以上はちゃんと一緒になるのは見合わせる。こっちは光るつもりはないから」 「じゃ、光らなかったら、そん時はいいな」 「いいよ」 二人の勝手な話は、やはり勝手にカタがついていった。 ブリギッドの記憶が戻るという問題が解決するのは、彼女が妥協する複雑な事情をふまえた上での少し先の話になる。 |