トップ同人活動記録FE聖戦 風パティ小説 INDEX>昔の話 1



(あとがきにかえて……昔の話)



「悪趣味だ」

 ブリギッドは、ありがた〜い聖遺物であるはずのイチイバルの印象をその一言で片付けた。

 その場――オーガヒルのある村の近くで火を囲んでいた一同は顔を見合わせる。

「悪趣味……というと、どういうことでしょう、姉様」

「まだあんたの姉さんって決まったわけじゃない」

 ピシャリと言ったブリギッドに、エーディンは息を飲む。

 ユングヴィの公女である事の記憶を欠落している、瓜二つの女性は間違いなくあのブリギッドなのだ。

 それを証明するためにイチイバルを出したのだが……。

「悪趣味は悪趣味だと言っているんだ。海賊でも十二聖戦士のことくらいは知ってる」

 いきなり話が飛んだことで、再び一同は顔を見合わせる。

 それを無視してブリギッドが続けた。

「あんた達の軍に、坊ちゃん刈りの騎士がいただろ。こげ茶の髪のが」

 その言葉に、同じ坊ちゃん刈りのフィンが嫌な顔をした。彼の主君の事を言われているのは自明の事である。

「そいつが、さっき光ったんだ。槍、振り回しながら」

「……それが?」

 この質問者はエスリンだった。

 幸か不幸か、あるいは何故かキュアンの姿はなく、その代わりに彼女の隣にはシグルドがいた。

 が、どうもこのところの出来事のせいで、ぼんやりとどこかを見ていることが多い。簡単に言えば添え物状態だった。

「それ、キュアンの事でしょう? それなら、兄様……この人もそうなるだろうし、あなただって」

 エスリンが控えめに指さすと、ブリギッドは顔を真っ赤にして首を振った。

「ふざけるな!
 あんな見せ物みたいになるくらいだったら、記憶なんか戻らないほうがましだ!」

「見せ物なんかじゃないわよ、それでもあなたは普通なんだから」

「普通の人間は光らない! あんた、自分で何言ってるかわかってるのか」

「ちょっと待った」

 申し訳なさそうに手を上げたレヴィンが話を止める。

 ブリギッドは首だけを動かして真顔になった。

「なんだ?」

「あの、さ。言い忘れたっていうか……言い損ねたんだけど、その……俺も」

「俺も?」

「……光るかもしれない」

「じゃあ、一緒になるって話は無しにしよう」

 ブリギッドは間髪をいれずに別れ話を切り出した。

 飛躍することこの上ない。

 すでに、この話についていけるのは当人同士だけだった。

「やっぱ、光るのは駄目かな」

「駄目だな。光るっていうのも問題外だけど、お前、嘘ついただろ」

「ついたか?」

「王族なんだろ、光るってことは。そんなこと言ってなかった」

 ブリギッドの中では光る=王族直系という図式が成り立っているようだった。

「海賊と王族じゃあ釣り合わないし、色々とやりづらい」

「……そうといえばそうかもな。もし、本当にエーディンの姉さんだったら、それもそれで厄介だし」

「とりあえず、お前が光る以上はちゃんと一緒になるのは見合わせる。こっちは光るつもりはないから」

「じゃ、光らなかったら、そん時はいいな」

「いいよ」

 二人の勝手な話は、やはり勝手にカタがついていった。

 ブリギッドの記憶が戻るという問題が解決するのは、彼女が妥協する複雑な事情をふまえた上での少し先の話になる。





BACK                     NEXT





サイトTOP        INDEX