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HOLPATTY ex1-4




「もう、行くの?」

「仕方ないでしょ、置いていかれたんだから」

 レイリアが外套を羽織ったままブーツの紐を結ぶのをラナは奇妙な感慨を持って見守っていた。

 ヴェルトマーへ行くレイリアが想像できなかったばかりでなく、こうして一人一人と別れていくことが幻のように思えた。

 最後にレスターと別れる時はどんな顔をしたらいいのだろう。そんなことも思う。

「それにしても、パティもなかなか人気があるのね。あんな風に言っていたからそんなでもないと思っていたけど」

「盗みをしていたから?」

「まっとうに生きていたら自分の面倒さえ見られないでしょ。そうしたら、どうしても手を汚さなきゃいけない。わたしだって同じ。踊りが誇れるようになったのは始めてからずっと後のことだから。
 いつかしっぺ返しをくうのはわかっているから、お貴族さんの奥さんにはならないの」

「え……でも、それだと」

 レイリアは力強く首を振った。

「話してどうにかわかってもらおうと思う。でも、優しいからヴェルトマーにいられるようにさせてしまうんだろうなとも思うのよ。それがいいのか悪いのかわからないけど。
 とりあえず、今のところは恋人よりも、ともだちを取ったって事で問いつめないとね」

 いたずらっぽく笑うレイリアに、黒の舞姫とまで言われた毅然さはない。

 掴みかけたものを楽しんでいるような顔だった。

「じゃ、ラナ元気でね。あと、あの人のことよろしくね」

 ラナは出てくる言葉もなく、ただ頷くだけだった。

 レイリアがため息をつく。

「そんな顔しなくていいのに」

「……わかってるわよ、そんなこと」

「だったらいいわ。他の皆に宜しく言っておいてね」

 バーハラを去るダンサーの背は、これからが戦いなのだとラナに語っていた。


(幕間 彼らの彼らとしての最初の足跡・了)





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