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HOLPATTY ex1-3




 アルテナは地上にある竜の騎上から、自分達を見上げる小さな影に気がついた。

「ユリア皇女、どうなさいました」

 白銀の髪が翼のもたらす風で揺れる。

 近すぎるから退けと竜が言っているのだった。

 ユリアは静かに笑う。

「誰も暴れはしないわ。だから、大丈夫」

「……皇女」

「大丈夫よ、わたしは」

 アルテナの記憶にある攫われる前のユリアというのはほとんどない。自身がそれどころではないのが一番の理由である。が、そんな頼りない記憶と合わせてもユリアは何だか違うように思えた。どこがどうと言えるものではないが。

「ねぇ」

 ユリアが精一杯首を仰向ける。

「この子なら、どこへでも行けるかしら」

「そうですね……イードの砂嵐とシレジアの吹雪には少し無理を言うようになりますが、避けていれば大丈夫ですよ」

「そう……よかった。
 わたし、戻れるのね」

 ふわりと踵を返して、ユリアは歩きだし……数歩してから振り返った。

「いつか頼むかもしれないけど、その時はお願いしますね」

 竜に乗せる事を?

 アルテナが内に湧いた疑問を口にしようとした時には、ユリアの姿はどこにもなかった。

 その代わりにユリアがしていた物と同じサークレットを掲げる女性がいた。ユリアと同じ白銀の髪はしかし波打っている。

「そう、還りたいのよね。わたしの時でもなく、セリスの時でもなく、あの不思議な人が護ってくれていた頃に」

 女性が首を巡らせてアルテナを見た。

「何かを見るかもしれない。あなたにはまだ可能性があるのね」

 女性の手かサークレットが滑り落ちて、乾いた音を立てる。

「悲劇を生むのは人、あなたもわたしもその資格がある。
 懐かしい人、お元気で」

 女性は背を向けてゆっくりと歩き出した。

 アルテナはただ、見つめる他にできることはなかった。

 ……あれは誰かの知っている何かだ。

 近いのか遠いのかさえわからないが、何かがここを離れることを望んでいるのだ。

 それは叶えられるかもしれないし、叶えられないかもしれない。見届けたところで何もわからないに違いないが、そうしてやるべきなのだろう。

 ……おそらく。





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