トップ>同人活動記録>FE聖戦 風パティ小説 INDEX>五 悪夢はひっぱたいて退散させよう 6
HOLPATTY 5-6 * パティが次に見た物は鞘つきの剣だった。 そして、肩で息を継ぐホークがそれを差し出している。 壁に背を預け、足は投げ出していた。 「頼む……パティ」 「ホーク様?」 パティは流れの上で剣を受け取ったが、何が何やらわからない。 それに、どうしてこの人がこんな事になっているのだろう。 辺りには千切られた紙が大量に散っている。 そして、パティの視界の片隅には攻撃の魔道の跡を強烈につけられた人影があった。 「だめだな、これでは……慣れない事はやるものじゃない」 この状態のホークに、現段階での再起は見込めそうにない。 光の魔道書は、作られた節度によってしようされなかったために原形を留めなくなり、何よりもホーク自身が消耗しきっていた。 「パティ。できるだけ早く決着をつけてきてあげるんだ。そのほうが、王女のためになる」 「……何があったの」 ホークがわずかに顔を仰向ける。 「王女が十二魔将の最後の一団と戦っている。それが、向こうだ」 そう言って右手の方角を指す。 「ただ、ユリア皇女が逆の方へ行ったのを見た。もしかしたら、皇女はわかっているのかもしれない」 勝手知ったるは自分の城、というやつだろうか。 パティは捧げ持つ恰好になっている剣を脇に抱える。 「どうなるかわかんないけど、やるだけやってみる。 「……済まない」 「ううん……行ってくる」 複雑な面持ちのまま、パティはホークの言う逆の方向へ歩き出した。 ……パティの中では、これもさっきみたいに夢のようなものなのかもしれないという思いがあった。 だが、覚めるきっかけはありそうもない。 パティは曲がったばかりの角を振り返る。 「やっぱ、戻った方がいいのかな……」 このスリープの剣でユリウスに対抗できる保証は全くなく、元々バーハラへ来たのは、ホークとイシュタルらヴァイスリッターを救い出す目的だったのだ。 ユリアはともかく、対ユリウスにはほとんど関係ないアミッドやラナ達が見つけられれば、こんな所にいる必要はない。ユリアを置いて帰ることになるが、止めても止められるとは思えないし、そもそもナーガがあればロプトウスに対抗できるわけで。 と、パティの耳に何者かが駆けている音が入った。 その方向はホークが倒れている前方の角である。 それが十二魔将だとしたらホークは止めを刺されてしまう。 「ホーク様!」 駆け出そうとしたが、不意に首根っこをつかまれて足が宙に浮いた。 背後には誰もいない。 嫌ぁな予感が脳裏をかすめる(と言っても手遅れである)。 パティは浮いたまま正反対に前後の方向転換をさせられ、わずかに前のめりになったかと思うと次の瞬間には、勢い良く襟口を引っ張られて、騎馬顔負けのスピードで水平移動をするハメになった。 首が締まらないように、かつ器用にスリープの剣を抱えつつ両手を首と襟の間に突っ込んだパティは、この奇妙な現象をレスキューのそれだと思い返した。 何の意図があってか知らないが、ラナかマナが呼んでいるのだろう。 宙浮きパティは後ろ向きのまま柱や壁にぶつかりそうになりながらも、角や階段といった難所をどうにかきりぬけていった……が、ホークの元に戻る道順を覚える余裕はない。それどころか、今頃あの足音はホークを発見しているはずだった。 悔しいが、それが敵のものでないことを願うしかない。 それにしても、今までのレスキューよりも乱暴じゃないかと思っているうちに、従姉妹の声が聞こえてきた。 「はい、目標確認!」 「目標確認!」これはマナであろう。腹の立つほどの息の合いようである。 わずかに後ろを見るパティの目には通路ではなく、大広間のようなものが映った。 人影らしきものが、みっつ。 「カウントダウン、十、九」 「転移準備完了」 「……六、五、四、三」 さらに首をひねるパティが見たものは、先程のナンナよろしく杖を構えるリンダの姿である。 ただし、リターンではない。 「ワープでしょ、それ!」 パティとしてはやめてよというつもりの精一杯の抵抗だったのだが、そんなものははっきり言って無駄である。 「ご名答っ♪」 憎たらしいほどの正答宣言を耳に残し、またもパティは飛ばされた。 |