トップ>同人活動記録>FE聖戦 風パティ小説 INDEX>五 悪夢はひっぱたいて退散させよう 3
HOLPATTY 5-3 * 二人(+ユリア)がホークの所に顔を出すと、彼は一人で書物に目を通している最中だった。 「ホーク様、今大丈夫?」 顔を上げると、ホークがかすかに頷く。 「イシュタル王女が動いているようだね」 「まぁそうなんだけど……。 「医療応用術の本だよ。杖の効力を、別の物に置き換えた時により良く効果を引き出す方法を探していたんだ」 「杖って、ライブとか?」 ホークは苦笑いをする。 「さすがに、それの方法は載っていなかったよ。今ある腕輪で研究し尽くされていたみたいだから」 「じゃあ、何が載ってたの?」 「スリープ」 パティと、後ろにいるアミッドの顔が凍りつく。 かの杖は、リアル木彫り顔がついている。パティが参戦しなかったエッダの戦いでは、敵方がそれを持って一列に並んでいたというから、セリスのような奇怪なものを奇怪と思わないような精神の持ち主でなければ耐えられなかったのだろうとささやかれていた(ティルフィングの影響だと庇う者もいるが、いささか怪しいものがある)。 「スリープには剣型があるだろう? それの効果をどうにか上げられないかと思っていたんだけど……。ちょっと今、荷駄隊から借りてきているんだ」 そう言ってそばの袋からホークが取り出したスリープの剣は元々パティが持っていたものだが、扱うにはあまりにも重すぎるので、少しのお金と引き換えに全員が使える荷駄隊の武器として登録したのだ。 もちろん、今現在の剣は変にいじられているわけでもなく、重くさせている一番の要因である大きい鍔と刃には細かい模様が刻まれている。このどちらかが欠けてしまうと、眠りの効果は現れないといわれている。 「この鍔を改良すればどうにかなると思う。それで、モデルを作ってみた」 再び袋に手を突っ込んだホークが出したのは、杖のものとそっくりな「顔」だった。 「……!」 絶句のパティはホークが出しただけに引き下がることもできず、だからといって正直なところ触りたくもない。 放っておけば鍔を取り替えて(魔法にゆかりのある品物は改良が楽なように設計されている)、パティに手渡し、具合をきいてくるのが目に見えているのだが、どうにも止めようとすることができなかった。 今までは、スリープのあの顔が大丈夫なのはちょっとおかしい杖使いだけだと思っていたが、なんてことはない。平気なのは杖使い全員なのだ。 が、そんなのがこの時点でわかったとしても何にもならない。何の役に立つんだと自分でツッコミを入れる他にないパティである。 救いを求めるつもりでアミッドの方を見たが、そっちはそっちで嫌そうな顔をしているのをユリアに咎められて、どう答えたらいいものかと悪戦苦闘中だった。 やはり、自分で動くしかない。 「ねぇ、ホーク様」 「何?」 「なんで、今になってそんな事やんの?」 ホークが「顔」を眺める手を止めてパティを見る。 「これは一か八かの賭けだよ。暗黒の化身にこんな物が効くかどうかわからないけど、手をこまねいているわけにはいかない。ユリア皇女がロプトウスに対抗すると言ったって、ユリウス皇子に遭遇するのは皇女だけとは限らないから」 「それはいいけど、誰かに持たせるの?」 「いや、これはわたしが持っていこうと思う。剣の心得はないが、ライトニングで向かうよりはまだ分があるだろう」 「……光の魔法って、闇には強いんじゃなかったの?」 かつて教えられたことをうろ覚えながら言ったのだが、ホークは否んじた。 「他の火・雷・風よりは分があるだけで、強いわけではない。それに、相手がロプトウスなら下手に魔力でいくのは危険だと思う」 「でも、他の誰かが持ったほうが……」 「お待たせ致しました」 パティが振り返ると、装飾の凝った槍を持った天空騎士がいた。いつ近づいてきたのか、彼女のそばには愛騎らしきファルコンがいる。 「シレジアの賢者殿、助勢の申し出、感謝致します」 深々と頭を下げる騎士にホークが応じる形で剣と荷物を持って立ち上がる。 「時がありません。先に行かせてもらえますか」 「わかりました」 騎士が腰に下げていた小型の杖を外して、ホークの目の前に掲げる。 パティが声を上げた。 「ちょっと、何すんのよ」 「リターン!」 その声にあわせて騎士の杖の珠が砕け散ると同時に、ホークの姿が瞬間的にかき消えた。 「リターン?」 パティの呟きに、騎士が応じる。 「賢者殿にはバーハラへ行ってもらいました。我らが主イシュタル様と……ユリウス様の待つ城に。 「じゃあ何? あんた王女様の命令でホーク様を飛ばしたって事なの?」 「端的に言えばそうなります。……わたしも主を待たせておくわけにはいかないので、行かせてもらいたいのですが」 パティの目が据わる。 「そんな短い説明でコトを済ませようっての?」 「駄目ですか」 「どーしてそんな勝手な事になったのかわからせてもらわないと気が済まないし、後を追うんだから当然聞くだけでも聞かせてもらわなきゃ」 メイベルは首を傾げる。 「わたしはあなた方の敵なんですよ?」 「ホントの敵だったら、んな事言わないでしょ?」 肩をすくめるパティに、平坦な声がかかった。 「……忘れ物があるから……取りに行っていいかしら……」 ユリアが幽霊のように呟くや、一同はおののきつつも了承し、本陣へと送り出した。 |