トップ同人活動記録FE聖戦 風パティ小説 INDEX>四 初対面の言葉 3



HOLPATTY 4-3




 パティの気分が落ち着くまで待ってから、パティとフェミナは城門を出た。

 フェミナが門のそばにつけていたファルコンに乗る。

「セリス様がどこまで来てるか見てくるね」

「わかった。誰かに伝えとく」

「……ごめん、近くにいてあげられなくて」

「それだけで充分だよ。大丈夫だって」

 フェミナは再びごめんと言って飛び立った。

「そんなに気を使わなくてもいいのに……」

 フェミナの任務は今や最前線にいる唯一の天空騎士として当たり前のものだった。パティにかかずりあっている暇は最初からないのだ。

 ファルコンが夜空に消えたのを見送ってから、パティはオイフェの所へ知らせておこうかと思ったが、さっきの荒れようを見ると行かないほうが得策ではないかと思った。かといって行動が知れ渡らないのは大問題だ。人員点呼の確認が取れなくなる場合がある。

 騎馬部隊の中でオイフェの次に指揮系統を握る人物といえば、レスターだろうかと思案する。アレスやリーフの方が身分は上ではあるが、解放軍の中核を成すのはやはりティルナノグの人々だった。

 誰かいないかと見回すと、ヨハンの姿があった。

「レスター見なかった?」

「いや、見てないが……。何か用事でもあるのか」

「フェミナがセリス様の様子を見に行ったの。襲撃の心配もあるからって。それ伝えに行かないと」

「オイフェ殿ではいけないのか」

 パティは演技で首をかしげた。

「ちょっと忙しそうにしてたから。
 レスターならオイフェさんの副官だし、いいかなって」

「そうか。なら彼にはわたしが伝えておこう」

「え?」

 予期せぬ言葉にパティは拍子抜けする。

「ここの司祭のフェリペ殿が先程から君を捜している。城に入ってすぐの階段を降りた所にいるから行っておくといい」

 では。と、手をかざしてパティに反論の余地を残さず、ヨハンは去っていった。

 本当に首をかしげつつパティはひとつの感想を持った。

 まともな人じゃないか、と。

 それはさておき、言われたままに再び城に入り階段を降りると赤い司祭服の男がいた。中年とも老人とも取れて、一方でどちらともいいがたかった。

 パティはのぞき込むように声をかける。

「フェリペさんって、あなたのこと?」

「はい。パティ様ですね」

 様を付けられて背中がむず痒い感覚を持ちながら、パティは頷いた。

「あの、その、様っての外してくれないから。なんていうか、こう……」

 フェリペは柔和な表情で頷いた。

「わかりました。そのようにさせていただきます」

 フェリペはすぐ近くの一室へと入った。

 パティが続くと、先客の姿が認められた。デルムッドとナンナである。

「どしたの、二人とも」

 だが、特に何かを言うこともなく、兄妹は何かを待ち受けるように椅子に座っているだけだった。

 フェリペが振り返って一礼する。

「パティさん、改めて自己紹介させていただきます。私はアルヴィス皇帝の側近だったフェリペと申します。皇帝からある命を受けていまして、今日はその一つを果たしに参りました」

 パティは、はたと思い出した。シアルフィで皇帝からせしめた物は三つ。そして、この二人がいる。

 ベルトにつけた小鞄から外套の止め金と指輪を出した。

「これでしょ」

「はい。ですが、その指輪はお仕舞い下さい。皇帝の眼鏡にかなう者の証で、パティさんがその所有者であることは存じております」

 パティは指輪を鞄に入れて止め金を袖で拭き、フェリペに差し出そうとしてそこで止められた。

「私如きが触れるのは許されておりません。パティさんからお二方に渡してください」

「でも、あたしこれが何なのか知らないよ」

「そこまではお話しにならなかったのですか」

「ファイアーとかファラフレイムとか飛んでるとこで、そんなの訊いてる余裕なかったよ。ただ……」

 パティは兄妹の方を向いた。

「親の事って、誰かからちゃんと聞いたことある?」

「母上はノディオンのラケシス姫だ。だが、父上の事を訊くとみんな口をつぐむ……予想はついているけれど」

 デルムッドはしっかりと答えるが、ナンナは兄の袖をつかんで震えていた。

 パティは内心で重くため息をついた。

 そうか、やっぱりそういうことなんだ。

 解放軍の側いいてヴェルトマーの血筋であることに恐怖せずにいることは難しい。たとえ、皇帝とのつながりを全く知らずに育ったとしても、皇帝を憎みながら成長したのなら尚更だった。だから、アルヴィスはあんなにまわりくどいことをしたのだ。

「あたし、こんな偉そうなこと言いたくないけど、二人のお父さんのこと話してもらってもいいんでしょうね。その上でこれを押しつけても」

「僕にくれればいい。どう使うかも僕次第だ」

 立ち上がって差し出されたデルムッドの手に、パティは止め金を置いた。

「覚悟決めてた?」

「半々。でも、パティを見ていると負けてられないよ」

「最初は盗賊だって毛嫌いしてたくせに」

「そういう事を言うかなぁ……」

 毅然としていたデルムッドの気力を引きむしっておきながら、パティがヒラヒラと手を振る。

「こういうのが最近続いてて疲れてるのよ。

 じゃ、あとは自分たちでどうにかするのよ」

 パティは母親くさい台詞を言って部屋を出た。





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