トップ>同人活動記録>FE聖戦 風パティ小説 INDEX>三 両者、接近せし 5
HOLPATTY 3-5 * 地上の家と城とつながる地下の境界は、実は街の別の民家ともつながっている。その民家は一般市民レベルのものではあるが、フリージ家の持ち物である。 パティとアミッドはホークたちを捜すつもりで入ったそこであやうく家人と遭遇しそうになり、慌てて教会に引き返した。 足音を殺しながら礼拝堂に向かう中、パティは問いかけた。 「……どう思う?」 返答するアミッドの声色は、沈みがちだった。 「どうっていわれてもなぁ……。 「どうして?」 二人の口調から先ほどの仲違いの様子は消えていた。 今はそれどころではない。 「イシュタル王女は、マンスターを取られた事に、根を持っているはずだろ。勇者が憎いってことになると……」 二人が礼拝堂に戻ると、新人が来ていた。 といっても、礼拝堂にとっての新人である。 「ホーク様ぁ!」 パティは一にも二にもなくホークの元に駆けつける。 「大丈夫だった?」 「いきなり落ちたから慌てたよ」 妙に噛み合わない会話である。 パティは辺りを見回す。 「……あの人は?」 そう訊いた答えは首を振った否定だった。 ホークがパティの目線に合わせてかがむ。 「じきにここは戦場になる。けれど、皆に面倒をかけるつもりはない」 「でも、トールハンマーなんでしょ? あの人」 あまりにも端折った言いようだが、ホークはわずかに頷いた。 「向こうも騒ぎになるのがまずいのはわかっているだろうから、そこまでひどいことにはならないはずだ。どうにかする自信はある」 「それじゃあ、アシュ……じゃないか、イシュタルさんはどうするの? 子供達を助けようとしてくれたじゃない」 それに対して、アミッドが顔をしかめた。 「助けるのかよ」 「だって、子供達を助けてくれたのに解放軍の枠の中で当てはめたら問答無用で殺されちゃうわけでしょ? そんなのおかしいし、バカみたいじゃない」 ホークが思考を取り混ぜながら軽く頷く。 「パティの価値観を最優先させれば、そうなるな……」 すかさずアミッドが抗議の声を上げた。 「どうしてそうなるんだよ! 野放しにしておいたら、こっちの誰かが死ぬかもしれないんだぞ」 「死なせやしないわよ」 「何?」 「そんなことさせやしないっつってんの」 自信を持って言い切ったパティの視線の先で、イシュタルが降りてきた。 外套は脱いでいて、何かを包んだ状態で左手に持っていた。それは、やたらと膨らんでいる。 パティのみを視界にとらえるイシュタルは、別段取り繕う様子もなく接近する。 「わたしの事はわかるか」 「さっき聞いた」 「…………忘れ物だ」 イシュタルが床に置いた外套から、パティに見覚えのある袋を取り出す。 「けったいな物が色々と入っていたが、お返ししよう」 パティはにわかに嫌ぁな予感を覚えつつ、アミッドに目配せした。 (どうしよう?」 (行けよ、フォルセティがあるだろ) (あちゃあ……そっかぁー、そうだよねぇ) ……もしかして。 パティはイシュタルの方へ歩こうとしたが、その足が止まってしまった。 「中……見たよね」 「悪いとは思ったが。 「使わない」 パティはトールハンマーの恐怖を忘れてイシュタルを見据えた。 「それじゃあ、いけないかな。 だから、とパティが続けようとした時、イシュタルが目を伏せて唸るように呟いた。 「恐れは、ないようだな」 「へ?」 「今のわたしでは、そんな言葉は吐けない。 そう言って三人の脇を通り民家の方向へと消えていった。 |