トップ同人活動記録FE聖戦 風パティ小説 INDEX>三 両者、接近せし 4



HOLPATTY 3-4




 小さい家の中に魔道書の紙が散乱していく。

 ホークは、ただそれを見ていることしかできなかった。

 雷神と呼ばれた魔道の使い手が、自らの印を破いていく。

 疲れたと言わせたのは、少なくともこの魔道書が一因を負っている。ただのブルームの娘であれば、ここまでの自信を得る事はなかった。必要とされる理由もなかったのではないだろうか。

 しかし、トールハンマーがその姿を失ったからといって、イシュタルのあり方が変わるはずがない。

「やはり、違ったのだな。勇者ホーク」

 不意にかけられたイシュタルの言葉が、一瞬だけホークの警戒を破った。

 その一瞬で、イシュタルが一枚の紙を手にしてホークの胸元に押しつける。

「申し訳ない」

 次の瞬間には雷神の鉄槌が下されている……はずだったが、結果的には弱々しい魔法雷撃がイシュタルの指から出てきただけだった。

 ホークは別段驚いた様子もなく、イシュタルの手と紙を体から離す。

「余程、わたしが憎かったようですね。
 マンスターの人々に裏切られた気がするのは、わからないでもないですが……それは報いです。
 わたしの力ではない」

 イシュタルは己が手を呆然とした様子で見つめ、肩を落とした。

「……それは、自業自得というものだ。わかっている、そんな事は」

「でも、わたしをどうしても叩きのめしたい、と。
 少なくともそう思っているわけですね」

 ホークは、床に落ちている紙のうちの一枚を拾って、目を通す。

 神々の力を具現するとまで言われる聖遺物の中で、魔道書にはそれぞれの力……「雷」なら、「雷」そのものを魔法としてどのように具現化するかといった事柄が記載されている。もちろん、ヒトに理解できるかどうかは別問題だが。ちなみに、普通の魔道書には詠唱の手間を省くための文が一頁ごとに書いてある。

 パティの持つフォルセティは、たまたま他の魔道書と同じように魔法の名を言うだけで発生するが、トールハンマーやファラフレイム、ナーガはその限りではないと言われている。

 この場で、しかも一枚だけではその真実はわからない。言えるのは、一枚では「トールハンマー」にならないという事だった。

「わたしを殺したところで、あなたにとってどんな得になるのか、理解に苦しみますね。
 あなたくらいの人なら、それくらいわかると思っていたのですが」

「……それは、挑発しているのか?」

 ホークは少し肩をすくめる。

「ちゃんと殺したいなら、あなたが今散らかした物を全て集めてから、わたしの前に出てきてください。
 そういうことです」

 言うや否や、ホークは素早くテーブルの下の穴に足から入った。

 要は、逃げたのだ。





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