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「Noise messenger[5]」5-5





(5-5)


 解放軍は城攻めに備えて、包囲網に後方の戦力を追加し、一方で頃合いの「風」の日を見極めようとしていた。

 その間のある日、マチスはマリアから呼び出されていた。

「ずっとお礼を考えていたんだけど、こういう物しか思いつかなかったの」

 言って、マリアは両手に収まる程度の、上品そうな布に包まれた物を差し出してきた。

「礼って言ったって……それだけの事をした覚えがないんだけどな」

「わたしにとっては、十分な事よ。本当は聖騎士の勲章と銀の剣を贈りたかったけど、受け取れないっていうから作ったの」

「……何ぃ?」

 ここに来てとんでもない単語が飛び出したものである。

「ミネルバ姉様やわたしが解放軍に入る前から反ドルーアで戦ってきて、マケドニアの出身でもミシェイル兄様に対抗しようっていう人が居た事は、とっても嬉しかったの。シスター・レナがきっかけだって言うけど、実際に戦場に出るのは勇気があって、讃えられるべき事だもの。

 でも、戦争が終わったら軍から退いちゃうっていうし、そんな時に何かあげてもあんまり有り難く思ってくれないだろうから、今ここで受け取ってほしいの」

「いや、褒美の類だったら今でも後でも変わらないんじゃ……」

「あら、これはものすごく実用的な徴よ。魔道に対抗する魔徐けを使っているんだもの」

 だから開けてみてと急かされ、不承不承手に取って布を開いてみると、確かにそれは魔徐けの札を巧みに加工したものだった。

「地板の横に色々と書いたんだけど、要約すれば「勇気ある支え手を讃えて」っていう意味なの」

 そうは言ってくれたが、字そのものがかなり細かい上に普通の文法に沿っていないように見えた。

 どころか、それ以上の事が書かれていそうなほど文章量が長い。

「要約ねぇ……」

「拡大鏡使って、古聖語で書いたのよ。楽しかったけど、しょっちゅうはできないから、大切に……っていうか、ちゃんと使ってね」

 念を押されてみれば、マリアは既に両手を後ろに回してしまっており、返す機会を物の見事に失っていた。

 勲章に言及したということは、これがマリアにとってはその代わりのつもりなのだろう。

「おれが居た事もあながち間違ってなかったってことか」

「もちろん」

 今度もマリアは疑うものなき自信に満ちた眼差しを向けていた。





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