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「Noise messenger[4]」4-0-ii:2







 王城が奇妙なほどの熱気にある中、魔道部隊を率いるバセック伯爵は強引に呼び止められて『穏健派』の懇願を聞かされていた。

「伯爵なら、陛下のお考えが熱に浮かされておられる事はおわかりでしょう」

「このままでは国のためになりませぬ。ミネルバ殿下と骨肉を削り合うなどと、これほど馬鹿げた話もないのですよ」

 そう訴えてくる重鎮達もまた冷静さを欠いていると伯爵には感じられたが、それは口にせず、ただ首を振るだけだった。

「微力ではありますが、わたしもまた陛下に忠実にお仕えするのみ。敵方に血を分けた者が居ても、責務に変わりはありません」

「そういう理由ではなく、我々は単に伯爵のお人柄からお頼みしているのです」

「ならば尚更、ご期待には添えぬということです。決死をもって国の舵取りをなさる陛下の妨げになるのでしたら、捨て置くことなどもっての外となりましょう」

 一種脅しめいた伯爵の言葉に、重鎮達が仕方なく踵を返していく。

 わざわざ伯爵を捕まえたのは、ミシェイルに対して完全中立を取った時期があったからだろう。別段ミシェイルの行動に抗議したが故のささやかな抵抗ではなく、王子だったミシェイルが国内の全てを掌握しようと動いていた時期だったため、万一に控えて均衡を取ろうとしたのだ。

 しかしそれが『穏健派』のよすがになる――彼らのすがるものが少ない証だったが、心外ではあった。

 伯爵自身はミシェイルに忠実に仕えているものの、廃嫡した息子が敵方の部将になっているとあれば、囁かれる声は様々な思惑が混ざるようになる。

 最近では、オーダインが失踪したというのは同盟軍に引き抜かれたからだという話が主材料になっている。だが、今や隔離された西部での事なので、正確な話は遠路を戻るであろう西部兵に尋ねなければわからない。ミシェイルがこの問題に深く追及する姿勢を見せず、竜騎士団の戦力増強に腐心しているのも根拠のない噂話の助長に繋がっている。

 不躾な話とは別にオーダインの行方は気になっているものの、独自に調査へ乗り出せば詮索の材料を増やしてしまうため、断念せざるを得ない。

 反面、そうした噂に上るほど名前が売れてきているマチスについては、若干の感慨があった。

 家の潮流に乗る才気を具現せず、他者から無能の烙印を押されても、伯爵にとっては存在するだけで紛れもなく血の繋がった息子だと言えたのだ。

 それが、どうやらそれだけではなさそうだと噂されている。

 『理想』が勝つ事を良しとしない賭けは、上々の経過をたどっているようだった。





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