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「Noise messenger[4]」4-0-ii:1





(4-0-ii)


 西部の戦線が崩れ、騎馬騎士団は団長オーダインの戦線放棄によって事実上解体して半数以上が敵対勢力に流れ、諸侯も南部と同様にミネルバがいる同盟軍に鞍替えした。

 この事態を把握したミシェイルは、次の手を即座に打った。同盟軍による東部強行突破が無用の被害をもたらすとして、この要所を守っていた領主連合を退かせた。代わりに、王都の戦力、特に竜騎士団を強化している。

 西部から王都への道が竜巻によって断たれた今、敢えて唯一の地上路をがら空きにしたミシェイルの決断に対し、国王派の諸将・諸侯の間に懸念を持つ潮流は存在しつつも、結局はなされるがままにしかできなかった。

 ミシェイルもこの王宮において自分の判断に異を唱え、覆せる人間がいない事を知っている。この国は彼が現れるまで、アカネイアの支配を抜け出すことすらできなかったのだ。

 一年半ほど前、大陸の東の端までドルーア帝国の支配下になったと聞き、ミシェイルはドルーアを封じ込める方策へ、いつ、どの契機で乗り出すか慎重に見極めようとしていた。オレルアンを攻め陥とした時の主力である竜騎士団を呼び戻していたのもそのためだった。

 だが、支配地域の兵力を落として間もない時になって、アリティアの王子マルスが東の島国タリスから挙兵し、わずか二百の戦力でオレルアンへ到達。オレルアン王弟ハーディンと合流して、マケドニアからオレルアンを取り返してしまった。

 そのマルスが軍勢を率いて、ミシェイルの元を去った妹ミネルバと共にこの王都へ攻めて来る。

 苦杯を舐めさせられた相手とまみえるわけだが、その思いとは別に、南の城を獲られてからというもの、竜騎士団を限りなく全力で投入できるこの形をミシェイルは狙い続けていた。

 同盟軍の上陸戦力からして、マルスとミネルバ、どちらもこの決戦に入らないという形にはならない。マルスが後方に下がると戦は長引くが、その場合はオレルアン王弟ハーディンが出張ってくるはずだから、どちらに転んでも竜騎士団の戦力で勝利を収めれば同盟軍の痛手は相当に大きくなる。同盟軍には、飛行戦力が少なく、各国の思惑のせいか竜騎士団の天敵たる弓の扱いが優れた部隊もまた多くはない。これもミシェイルに味方している要素だった。

 同盟軍に上陸を許してからというもの、和睦に逃げようとする声を耳にしつつもその選択肢を完全に黙殺してきたのは、空を制する竜騎士団の強さを知っているからだ。

 王都の戦力は核に竜騎士団、天馬騎士団があり、地上の機動力として騎馬騎士団とグルニア黒騎士団からの混合騎馬隊、城の守りに鉄騎士団と魔道部隊がつく形になる。

 ミシェイル自身も総大将ではあるが、竜騎士の戦装束をまとって戦場に出るつもりでいる。これに関して、もしもの事があったら一大事になるから思い留まるようにと重臣から求められたが、彼はその懸念を一笑に付した。

「マケドニアの敵を排除する戦から逃げて、竜騎士の国の王は名乗れぬ。俺を王に戴き戦列に立つ者は、俺と同じ覚悟を持つことだ」

 このミシェイルの言葉は、瞬く間に王国軍全てに伝えられ、その多くが熱意に感染したのか、最後まで戦い抜くのだと戦意を昂ぶらせていた。





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