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「Noise messenger[3]」3-4:2







 西戦線に移動したマチス隊の役割は遊撃的なもので、これというものは決まっていない。オーダインが絡むのだからそれらしいものが回ってくると思った一同は拍子抜けする思いだった。

 加えて、そのオーダインがロシェやパオラとやりあった事を聞くに至って、元配下の騎馬騎士達からは嘆きとも取れる感想が飛び交った。

「本当にここを墓場にするつもりなのかよ……」

「あくまでも王に殉じようというのか……」

 騎馬騎士団というのは、団長オーダインの能力が飛び抜けていても、他は全く追いついていないため、さほど強力でもない。

 対する西戦線の解放軍は、それまででも十分強力だったのが、今回の補強で、繊滅戦での勝利を確定するほどの戦力になっている。

 一度城から退いているため、おそらくオーダインがこの戦で撤退する事はない。ミネルバの説得に呼応しなければ、それなりの数の敵と味方を道連れにしていくだろう。自らの力が劣っていたと認めて降る捕虜の場合は自刃を禁じていたが、戦場を駆ける意志がある限り引き下がろうともしないのも、またこの人の特徴だった。

「お前が動かないってのは、今度こそ無理だと踏んでいるのか」

 シューグが投げかけた問いには答えず、マチスは自分の疑問を投げ返した。

「そっちこそ、どうなる事を望んでるんだ?」

「そりゃ、戦いなんて事になったら、後味良くないなんてもんじゃ済まねぇよ。そういうもんだから仕方ないとわかっているのと、気持ちでどう望むかは別だろ」

「そう思うのはいいのさ、ただ、どうやって事が運べばいいんだろうなってのがな。予言者じゃないんだし、考えたってどうしようもないんだけど」

 このところ自分の中で自分の価値が滅法下がっているだけに、こうして前線へついてきたところで、下手を打つと居ても居なくてもいいような役どころに収まって、そのまま終わりかねないのに、手の打ちようが何も思いつかない。

 そんな気持ちでいたせいか、心の中で留めていた事が口を衝いて出てきた。

「……この間、将軍と話した時さ、おれの部下になってくれてる人達みんな、将軍に預けたいって持ち出したんだよ」

「なンだと?」

「……酷い、独断ですな」

 声を発したシューグとボルポート以外にも、聞こえてしまった面々がぎょっとして動きを止める。知らないうちにそんな話が進んでいたと知らされれば、心穏やかならぬものになるのは当たり前だった。

「それで、どうなったんだ」

「どうもこうも、今は無理だって言われちまって、まぁゴタゴタしてた時だったし、こうなってるのを見たら反故にされたんだろうなと」

「……やっぱり、お前は考え方の振り幅が大きすぎる」

 身がたねぇよとぼやくシューグの横で、ボルポートが姿勢を正す。

「しかし、わざわざ我らに明かさずとも、実らなかったものであれば、黙っていても良かったのではありませんか?」

「そうと言やそうなんだけどさ。おれなんて元々貴族の身分があったからみんなの上に立ってるだけで、騎馬騎士の実力なんて下から数えた方が早かったわけで。解放軍に集まった連中が強いおかげでどうにかなってたけど、最前線に出る機会が増えてくると、もう通用しなくなるんだろうなと思ってね。

 順序が逆ってのはわかってたんだけどさ」

「ついでに言えば、この、今じゃなくても良かったんじゃねぇか? ただでさえ下がってる士気をどん底に突き落としやがって」

「それと、シューグの質問に答えておりませんな。自ら行かれるでないにしろ、この隊から使者を出す事も想定されたはずでしょう」

「その話題を王女から振られるまでに何も出て来なかったんだよ。こう、何か動かすほどのものが。王女には元からこういう手で攻めたいっていうのがあったらしいし、退けるまでいかなかったってわけで」

 ミネルバとの距離は微妙な所にある。近くては困るのだが、この今になって意外な所で壁を作られている感じがする。そう熱心に仕えているわけでもないから、そのつけが回っているといえばその通りなのだが。

「しかし、まさかこの肝心な所で指くわえて見てなきゃならねぇとは……。どうして、こうもままならねえんだか!」

 シューグの嘆きは、これ以上なく一同の思いを代弁していた。





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