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「Noise messenger[2]」 2-2:3






 どこよりも人の入れ替わりが激しい傭兵隊で、全ての隊員の顔をいちいち覚えるのは至難の業である。よって、人員の管理は甘くなり、悪名高い人間の存在を把握するのが精一杯となる。

 が、マケドニア最南部の城に落ち着いたシーザはそうした新入り達の中に、ありえない人物の姿を見つけた。

 よく知られた特徴は頭部に巻きつけた布や外套に隠され、得物も以前まで持っていた代名詞とまで呼ばれた切れ味鋭い剣ではなく、そこらでいくらでも補充できそうな普通の剣である。

 だが、シーザはその顔――以前よりも頬がけて、別人のように見えてはいたが――を見落とさなかった。

「ナバール、どうしてグルニアに残ったあんたがここにいる。それも、こんな新入り連中に混ざって」

「グルニアの残党狩りはアカネイアの傭兵隊にってきた。

 ……放っておいても同じなのだが、やはり見届けぬと安心できないらしくてな、それでここに潜り込ませてもらった。無断で抜ける事もあろうが、見逃してくれ」

 言うだけ言うと、これ以上話すつもりはないとばかりに流れ者の傭兵を装ったナバールは顔を背けた。

 これを問い質そうと思えばできなくもなかったが、シーザはひとつ舌打ちをしただけで踵を返した。

 言っている事は勝手きわまりないし、それなりにある傭兵隊の規律を無視すると宣言されては面白くない。だが、相手はタリスの傭兵オグマに匹敵する、いわば同業の頂点にいる人間である。一個人として潜り込んだようだが、それなりの裏があるのを想像するのは難くない。

 真相を調べるにせよ、警告を報せる相手を吟味するにせよ、どうにも複雑な道筋しか浮かばない。傭兵の身でしかないのを悔やむのはこういう時である。

 遺憾ではあるが、今は自分や解放軍にとって何らかの被害をもたらされないのを願うしかなさそうだった。





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