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「Noise messenger[1]」 1-2:3






 解放軍の前線から平原を一直線に北上すれば城に着くが、この間に元黒騎士団がおり、その両翼には魔道士の部隊がついている。

 数だけで言えば解放軍の方が圧倒的に多い。だが、それはグルニアの時も同じで、今回よりも戦力が充実していたにもかかわらず大きな被害を受けている。というより、マケドニアの地で黒騎士団と戦う羽目になったのが一同にとって予想外だった。

 左右の林から奇襲の可能性があるのも悩みの種である。

 しかし躊躇していられないのも事実で、先鋒をオレルアンが務め、残りが遊撃のような形を取ることになった。

 最初にウルフとザガロが率いるホースメン隊が城の前に陣取る元黒騎士団の部隊を引き寄せ、一斉射撃の後に散開する。

 そこへ、ロシェとビラク、オレルアン諸将で構成した三千の騎馬隊が突撃をかけた。

 両者の衝突は数の比率で表せば解放軍の方が被害は大きかったが、乱戦によって敵の部隊長を討ち取ったため一角が崩れた。

 守りに入る敵方をそうはさせまいとオレルアン勢は更に攻めかかろうとする。だが、かつて大陸にその名を轟かせた黒騎士団だけあって、再度の崩落は起こせなかった。

 ここはもう一度突撃をかけるために後退した方が良さそうだとロシェが判断した時、急に元黒騎士団の陣形に動きが出た。

 と、伝令が敵の後方から魔道士隊が接近してきているという報せを持ってきた。

 こちらは騎馬の民だから大部隊でも後退の遅延は他国の軍隊よりも少ない。しかし、どう頑張っても最後尾が魔道の攻撃を受けるのは避けられない。

 攻撃の魔道は肉体をいかに鍛え上げても魔力に通じた身の守りがなければ防ぎようがない。殊に炎の魔道は自然発生的な炎ほどではないにせよ、風向き次第で被害の度合いが変わってくる。

 ロシェやビラクは先鋒ではなく、その次にいる。先鋒の後退を助ける意味でこの位置についているが、元黒騎士団の残りと魔道士隊の攻撃を受けるとなれば覚悟を決める必要があった。アリティア勢を中心とした遊撃隊が動くのは、作戦の都合上第二撃以降と決めていたからだ。

 もちろん定石通り将が先に逃れても良い――というよりそうするべきですらあるのだが、雪辱を晴らす相手のマケドニアやある種の競争相手であるアリティアの軍勢がいる戦場で、単に逃げを打つような行動は起こしにくかった。

 となれば、自分達が前に出つつホースメン隊で敵の魔道士隊を狙うべきか。

 ロシェがビラクにそうした提案を出そうとした時、ミネルバの伝令がやってきた。曰く、上空から奇襲して手助けできるので指示を仰ぎたい、とのことだった。

 純粋に時間稼ぎとしてならこれ以上ない好機である。だが、味方とはいえできればマケドニアの人間に借りを作りたくない。自分の意思というよりも、オレルアン騎士の感情がそちらへ動くに違いないのだ。

 しかしながらホースメン隊の到着を待つよりも、ミネルバ達の協力を得た方が被害はまだ小さくなる。

 ロシェは先鋒の部隊に後退の指示を出し、ミネルバ達には主に魔道士隊を狙った奇襲を要請した。竜騎士でも魔道の攻撃に晒される危険は変わらないが、中級程度の魔道は詠唱が終わるまで時間がかかる。詠唱に集中できない状況を作ればまだ結果は変わるはずだった。

 先鋒が後退し、ロシェ達本隊は彼らを追ってくる元黒騎士団を迎え撃つ。

 敵は銀の槍を携えていたが、ロシェの得物も銀の槍だった。次のオレルアン聖騎士として期待をかけられているため、振るう事を許されている。

 同じ武器を持つ矜持からか、ロシェの部隊は防戦のこの時にあっても格下の不利を感じさせない戦いで敵を撃破する。だが、突出を避けるため押し込みにはかからない。

 敵の数を減らす早さが上がってきたと感じてきた頃、元黒騎士団は一斉に城へ向かって走り出した。魔道士隊も退いている。

 味方の損害と戦況からロシェはこれを追撃せず、自分達も一旦引き上げることにした。





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