サイト入口同人活動記録FE暗黒竜




「Noise messenger[1]」 1-2:1




(1-2)


 上陸の手順としては、第一陣の六割を占めるオレルアンが大量の人馬をもって機先を制し、その後にアリティアを始めとするその他の勢力が続く流れとなる。

 当然ながらミネルバ達天空騎士の部隊は別行動になるが、敵を引きつけやすい存在であるため、若干抑え目で進むことになっている。

 予定通りマケドニア南端の地へ到達しようというオレルアンの大部隊をオーダイン直属の騎馬騎士団が妨害してきた。

 最初のうちは降りようとする先からホースメンや騎馬の手槍に狙い撃ちされていたものの、それを押し切ってオレルアンの主力が守りの陣形を形成し始めると、攻撃の手は緩んだ。

 その隙を逃さずオレルアン勢が攻勢に転ずると、マケドニアの騎馬騎士達はすぐさま後退の動きを見せた。東西に別れて後方の林を目指すなり、東に逃れたのである。

 オレルアン騎士はこのいずれをも追ったのだが、西側へ行った騎士隊はさすがに林の中に入る深追いは避け、その前の平原に陣を敷いた。

 一方の東側はしばらく追っていたものの、最終的にはやはり撒かれてしまった。それだけならまだいいのだが、気づけば周囲は林と山、三方が視界を遮られた場所まで部隊を進めていた。

 主力に竜騎士がいる軍を相手に、ここで陣を敷くのはあまりいい判断ではない。

 しかし、下手に動くのも避けたい雰囲気がある。伝令を南へ走らせて様子を見ることにする。

 しばらく待っていると、数騎の天馬騎士が近づいてきた。タリス王女シーダがパオラから借り受けた従騎を連れていた。

 彼女からの報せはすぐさまウルフとロシェの耳に届いた。

 迎え入れたシーダを前に、再度確認する。

「シーダ姫、それではあの騎馬兵は囮だったというのですね」

「はい。これから来る竜騎士隊が本隊です。ここへは北から六百ほど」

「六百程度なら迎え撃つ事はできなくもないですが……しかしここに留まるのは得策ではない。従いましょう」

 オレルアンの勇将ふたりが頷くのに、シーダは内心で強い安堵の思いを抱いていた。

 オレルアンの騎士達に対して空の情報が必要な場合、シーダがその役につくのが最良だと推薦してくれたのはハーディンだったのである。

 未だにオレルアン騎士がマケドニアの天空騎士を味方として信用し難いと思っているのは悲しい事ではある。だが、そうした感情が混乱をもたらし全滅を招くぐらいなら、それを回避する方法として貢献するのは決して悪い事ではない。

 オレルアン勢を先導して南下するさなか、シーダは真逆の方向へと空を駆けるミネルバ達マケドニア天空騎士の一団を見た。ペガサス三姉妹の姿もある。偵察や伝令を除いた解放軍天空騎士全戦力であろう。それでも、北から迫る竜騎士の数には及ばない。

 大丈夫だろうかと思わぬではない。だが、今のシーダには彼女達を信じるしかなかった。

 一方、西で林の前に布陣したオレルアン兵――こちらは四雄ではなくオレルアン諸将の軍勢だった――は、接近の報告がが間に合わず、マケドニア竜騎士隊の急襲を受けていた。

 こちらの三千に対して敵はわずか六百。しかし、森の前にまで迫って陣を敷いていたのが災いして逃げる竜騎士への追撃は木々によって阻まれてしまう。それでなくても上空から一方的に攻められる圧力は強く、飛竜の固い鱗が槍を弾いてしまうのはこちらの士気を落とすには効果覿面てきめんだった。

 守りながら退いて平原で新たに陣を敷くべし――と動きかけたところで、青を基調にした騎馬の軍勢が駆けつけてきた。

 アリティア王子の騎馬隊だ! オレルアン騎士が叫ぶのに応えるようにして青の騎馬隊はオレルアン勢を守る位置についた。その後ろでオレルアンの騎士達が乱れた隊の陣形を修正し始める。

 再び竜騎士が現れた時、アリティア隊の中から一騎が飛び出してきた。

「我はアリティアのマルス! 竜を屠る我に近づく者は堕ちると思え!」

 言い放ってひらりと下馬し、竜殺しの剣を構えた。

 総大将がたったひとりで飛び出し、しかもかちになったのを侮ったのか、一騎の竜騎士が急降下し、名乗りを上げながらマルスへ槍を繰り出してきた。

 降下の風圧は相手が並の剣士であれば体制を崩すほどだが、竜騎士の前に立ちはだかるアリティアの王子は、風に負けるどころかしかとその場に立ち続けた。

 そして躱せるギリギリのところで槍を避け、そこから間髪入れずに竜の鼻面めがけて大きく跳躍した。

 突然の奇抜な行動に鞍上の竜騎士が驚いている暇もなく、マルスは一閃の下に竜騎士を斬り捨て、そのまま地上に飛び降りた。

 ほんの一瞬でもまばたきしている間に二段階推移するほどにマルスの行動が早く、地上を離れてから戻って来るまで十秒も経過していない。

 無謀を通り越えた無茶苦茶な戦闘に、敵もアリティア以外の味方も呆然とする他なかった。

 ためらいのようなものを含んだわずかな間の後、一応は戦闘が再開されたもののマルスが現れたことでマケドニア軍の勢いが消失し、最後には後退していった。

 そこへ、城の方向から新たな敵の部隊が中央に進んでいた解放軍の先鋒に迫っていると報せが入り、マルス達とオレルアン騎士は救援に向かったのだが、その先で彼らが戦うことはなかった。

 別の人物によって戦況が決したためである。





BACK                     NEXT




サイトTOP        INDEX