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「諸記 カシミア〜グルニア戦」 3-5






 解放軍は進攻路を南部の平原から、北部へ転じた。一度は制圧寸前まで持ち込んだグルニア最大の港町を得ようとしたのである。

 だが、そこへ至るための跳ね橋は解放軍が敗走した後に上げられてしまい、この仕掛けを動かそうと迂闊に近づけば対岸にいる戦車隊の的にされてしまう。命と引き換えに解放軍へ貢献するこの役目を名乗り出る者はいるかもしれないが、こうした形での犠牲をニーナが忌避し、首脳達もできるだけ避けようと考えていた。

 かといって、強引に渡河するのも同様かそれ以上の危険がつきまとう。

 元々、グルニアで激戦になるのはわかっていた事だし、これもまた避けられないかとそんな雰囲気になった時、各地の空を巡っていたミネルバが三姉妹を引き連れて軍議の場に現れた。

 グルニア中央地域と南西の砦から解放軍を攻撃する大部隊が派遣されようとしていることを報告した後で、河向こうを攻略する初手を任せてもらえれば活路は開けると進言した。天空騎士は港町を守る敵勢の三分の一に満たない数しかないが、地上への攻撃は圧倒的有利に運ぶことができる。加えて、ミネルバ直属の白騎士団は普通の天馬騎士よりも戦いに長けており、三姉妹の連携があれば竜騎士に引けを取らないと断言した。

 数で上回っておいて辛勝の戦を経験したばかりの解放軍にとって、ミネルバの提案はためらうものがあった。天空騎士は余人が得られない空からの情報収集能力で多大な貢献をしているし、少数での攻めは失敗するに違いないと見る風潮も生じている。

 だが、最前線に出ている将ほどミネルバを支持した。敵の竜騎士は弓や魔法がなければ少数でも驚異であったし、天馬騎士も決して侮れない。一度はオレルアンを竜騎士団に奪われ、骨身にまでその強さを味わっているハーディンが彼女達を高く評価し、ミネルバの提案は通った。

 出撃のために集められた天空騎士は偵察などの任務を与えている分を除いて二百五十程度。万単位の兵が集結している地上の本隊に比べると、少なさは際立つ。

 しかし、ミネルバ達は臆せずに出撃し、まずは河を越える障害になる戦車隊を標的にした。弩の届かない所から急接近して集中的に槍を落とし、あるいは雷の魔道を放つ剣で打撃を与え、とどめに竜騎士の急襲を加えてついに破壊に至らしめた。

 この間、戦車隊を守るはずだったグルニアの大重騎士隊は空の相手に対抗できず、最後の方でようやく盾になるべきだと気づいたものの、時既に遅く、味方を守りきることができなかった。

 ミネルバ達は勝利の余韻に浸ることなく、今度はその大重騎士隊に狙いをつけた。もっとも、こちらは己の装甲だけに頼る戦車隊とは違い、自分達で守りの体勢を取れるため、同じ戦法では大した効果が出ない。

 ここで、カチュアとエストが危険を承知で大重騎士隊の槍が届くぎりぎりまで接近して直前で滑空し、左右に分かれたところで後ろにいたパオラが攻め立てた。少なからず崩れる敵に、去り際のカチュアとエストが槍を落として更に打撃を加える。三角形の攻撃陣トライアングルアタックが見事に数と力の不利を覆していた。

 じきに跳ね橋が下りると伝令が報せてきたのを潮に、彼女達はすみやかに引き上げ、大重騎士隊への対処を本隊に引き継いだ。

 緒戦と違って、機動力に優れる黒騎士団聖騎士の部隊が配置されていなかったこともあり、解放軍は敵勢を破り、港町を再び占拠したのである。





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