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「諸記 カシミア〜グルニア戦」 2-2






 ナーガの生き残りが五歳くらいの女の子と聞き、実際に見て、解放軍の首脳達はまず面食らった顔をした。

 神聖さをたたえた面立ちであればまだ良かったのだが、チキの場合は無邪気な幼女そのものである。どこをどうやったら、マムクートに対する強力な戦力になるのかと危ぶむ声も出た。

 ただ、チキが連れ出されたことでラーマンは抵抗をやめ、グルニアを攻めるにあたって脅威が減ったのも事実で、これに関して深く問答を繰り返すのも不毛だということで、話は切り上げられた。バヌトゥになつくチキの姿に微笑ましいものを多くの者が感じてしまったのも、この効果に一役買ってしまっている。

 マルスがラーマンに立ち入っている間に、解放軍は各国の軍勢を動かしており、海と陸の役割を大方逆転させていた。潜入の前に、海路でグルニアに入ることを決めていたのである。カシミアでは動けなかったマケドニア天空騎士の部隊も、ここからは空を制するべく精力的に動いている。

 海路を選択したことで、マケドニアやドルーアがグルニアの援護へ乗り出すことが懸念のひとつに上がっていたが、その気配はない。皆無ではなかったが、標高が高く、中継基地を作れない西の山脈は拠点にできず、南から船を繰り出さないのは、おそらく帝国側の弱体化が原因だと思われた。

 そうして配置を整えているところへニーナが本隊に到着した。マルスとハーディンを呼び、グルニアを攻めるにあたって聞いてほしい話がある、と切り出したのはアカネイア陥落時のことだった。三年前にあたる。

 パレスが陥ちた時にメディウスの命令でアカネイアの王族が次々と処刑される中、黒騎士カミユは命令に反して最後に残ったニーナの命を守った。

 しかし、メディウスがこれを許すはずもなく、ニーナの元に親衛隊が差し向けられ、それを知ったカミユはニーナをオレルアンへと逃がした。それが元で、カミユは最近まで虜囚の身としてドルーアに留められることになったのだった。

 ニーナにとって国や親愛なる人々を奪ったカミユは憎むべき相手だった。けれど、自らの身を顧みず自分の命を守ろうとしてくれたのを知っているだけに憎みきれない。

 幸いドルーアの力は弱まっているから、彼とは戦わずに講和の場を見出してほしい、と首脳ふたりに訴えた。おそらく、カミユはわたくしの呼び掛けを無視しないだろうから、とも。

 ニーナに言われるまでもなく、解放軍はカシミアに入る前からグルニアに講和の使者を出してはいるが、ことごとく拒否されている。

 マルスもハーディンも難しい顔はしたものの、できる限りの努力はするとニーナに約束した。

 そうしてニーナが去った後に、アリティアの王子とオレルアンの公爵は意見を交換した。

 ニーナの希望を叶えるのは厳しく、かつ、ニーナからカミユへ何らかの思慕が働いているのは明らか、というところでふたりの認識は一致したが、そこから先の考えは微妙に温度差があった。

 マルスは国を直接滅ぼしたカミユよりもメディウスに対する意識が強いためか、今回に関してはニーナの思いにできるだけ沿おうと考えていた。それが失敗に終わろうとも、意味はあるのではないか、と。

 対するハーディンは、大陸に名だたる名将とはいえ、騎士として今まで数多の戦場を馳せてきたカミユが国を敵方に明け渡すとは思えなかった。グルニアの実権を握ってはいても、仕える者の範疇は抜け出せない。交渉するのであれば王族が的確だろうとは思うが、グルニアの王族はもはや黒騎士団に国運を委ねてしまっている。交渉の余地が生まれそうにないのはやる前からわかっているだろう、と。

 とはいえ、約束は約束だから、できる限りニーナの意に添う事は考えようという基本路線を固めてマルスとハーディンは別れた。





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