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「諸記 カシミア〜グルニア戦」 0-2






 カシミア海峡にてグルニア黒騎士団の一軍を率いるスターロンは、諦めに似た感情を抱いていた。

 カミユに及ばないとはいえ、黒騎士団の将を任されている身である。それが、カシミアの守備隊を務めよと、主君からではなくガーネフに命じられている。

 かつては大陸随一の騎士団とまで呼ばれた黒騎士団だというのに、攻めに出ることもできず、同盟軍の力を知るためのはかりとして使われてしまっている。あるいは、ラーマン寺院に据えたという殺戮の女神の前座か。

 それでも、未だ味方につこうという者もいる。しかも同盟軍からの寝返りだ。

 元アカネイアの将校を名乗った騎士は、黒騎士の庇護を受けるグラ人から紹介されたと言っていた。

 単に黒騎士と称される人間は、この大陸でひとりしかいない。グラを訪れた時に敗残の兵を拾い上げ、ある程度は同盟軍に潜り込ませたと聞いていたが、奇妙な事になったとしか言いようがなかった。

 スターロンは完全に信じるほど突き抜けた思考の持ち主でもなかったし、騎士のこうした行為自体に懐疑心が生じていたので、下手をしたら毒を差し出すとわかりつつグルニアの王都へ送り出した。この騎士を呼び寄せた原因であるカミユに判断を委ねるためだ。

 そのカミユはガーネフによってカシミアへの出撃を禁じられている。ここで黒騎士団に勝たれたら困ると臭わせたガーネフの口調は今でも耳に残っている。ラーマンがガーネフの管轄にあるとはいえ、明らかにグルニアを侮蔑していた。

 悲しいかな、黒騎士団はいかなる時でも味方を裏切れない。こちらを味方と扱わない味方でさえも。裏切れば同胞が真っ先に熾烈な追討を仕掛けるし、何よりも今のスターロンには黒騎士団を裏切る意味が見出せない。

 結局、対岸に迫ろうとしている同盟軍を相手取るしかなかった。黒騎士団の一員としてできる事は常に同じ、その名に恥じぬ戦いを為すだけだった。





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