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「ENEMY IS D」 3-1





(3)


 王都奪還の興奮も冷めてきて、城下町が落ち着きを取り戻し始めた頃、マチスはミネルバに呼び出されていた。

 挨拶を済ませると、先日話そうと思っていたのですがとミネルバが切り出し、

「卿が槍を交えようとしていた竜騎士は、従兄弟殿だったのですね。私の手の者が討ちましたが、申し訳ない事をしました」

 目を伏せて俯かれてしまったのだが、マチスにとっては唐突な話だった。

「従兄弟?」

「ええ。説得は叶わなかったのですが、せめて卿に譲るべきだったと思っています」

 話が噛み合わない。

 従兄弟と聞いて思い出せるのは、魔道と剣を操る器用なアイルだけで、他には思い当たらない。

 ……いや、いた。マチスはかろうじてその存在を思い出す。

 本人を見た記憶はほとんどないが、謹慎中にアイルの口から弟がどうしただのと何度か聞いた憶えがある。

 名前はネクス。魔道がお家芸の伯爵一族において竜騎士を志願し、マチスとは別の意味で変わり者の評判が立ったという事も聞いた。

 まさか、それがあの矢だらけの体で吠えた竜騎士だったとは……。

 あの時気づいていたらどうなっただろうかと思うが、結局は敵対したままだっただろう。家の主流から外れて竜騎士になったということは、それだけミシェイルへの忠義が篤いのだ。王侯貴族に対してどうしても懐疑的になるマチスと折り合うはずもなかった。

 ただ、マチスはネクスが特別憎いわけではない。ミネルバの言うように直接戦う機会を与えられたとしても、思想の違う血族を討つのではなく、部下を殺した敵を倒す意識で臨んでいただろう。勝てるかどうかは別の話だが。

 珍しくミネルバがため息をついていた。

「……難しいものですね。帝国勢力を覆す勢いは以前より確実に強くなっているというのに、マケドニアの同志はなかなか集まらなくて。先日の戦いで降伏してこちらについた者がわずかながら居ますが、それでも解放軍と槍を並べる事を最後まで拒む者もいました。ミシェイルは野望を果たすためにドルーアと手を組んで、己だけではなく国さえも人の道から外してしまっているというのに……」

 ミシェイルが支持されているのは、マケドニアがアカネイアの干渉から逃れられた点にある。そこへ、ミネルバは人の道に戻るといって、アカネイアの手を借りようとしている。本国から遠いという事実があるにせよ、人があまり集まらないのは当然の話だった。




 マケドニアに反した人々の多くが、血縁者や身内と戦う愚を定められている。

 定めを定めと汲むか、挑戦と受け止めるか。あるいは定めとさえも見ないか。

 徐々に近づく決戦の時まで、器の変化は続く。



( ENEMY IS D : end)





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