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「ENEMY IS D」 2-1





(2)


 黒騎士団の率いるグルニア騎士隊を撃破した後に、解放軍の前線主力部隊は王都の前を守っていたグルニアの将軍ホルスタットをも打倒。後続によって東の要塞打破とカシミアへの抑えを確実なものとすると、先発の騎馬部隊に加え、主だった将の部隊を王城の前に集結させた。いよいよマルスの居城を取り戻す戦いが始まるのである。

 ここに至るまでの国内平定で最も大きな功績をもたらしたのは、騎馬部隊の先頭を走ったアリティアの聖騎士アランだった。グラの制圧と共に解放軍に接触し、彼らがアリティアに入る前の段階で王族の帰還を待ち望む勢力をまとめて、国内北部に駐留していたドルーアやグルニアの軍を追い出した。それだけでなく、騎馬部隊に合流してからは黒騎士団の部隊とも果敢に戦っている。

 アランの件に限らず、ここまでアリティア勢の働きは誰にも譲らないほどだったが、まだ足りぬとばかりに城の奪還にはドーガやゴードン、マリクを主軸に加えて「自分の家は自分達で取り戻す」姿勢に出た。

 それでも他国の将が何人か奪還戦に入ることはできたが、大戦力でもなければ特異な役割を残せるわけでもない、マチスのような部隊は城下の秩序のためにという名目で城の外に居残ることになる。

 城下に残る帝国の兵を駆逐する役割を与えられてはいるが、実態は瓦礫やら様々な物の破片を片付ける掃除屋だった。

 いざという時の事を考えると必要な仕事ではあるが、いかんせん地味である。

「こういう仕事の方が合ってるといえば合っているんだけどなぁ……」

「確かに、人死にが出ないだけ、ましと言えばましでしょうな」

 おや、とマチスが歩兵部隊長を見ると、彼は気味悪そうに首を振った。

「何ですか。あなたの言いそうな事を言ったまででしょう。実際に今回はあれだけの戦死者が出たのだから、それも無理はありませんが」

 普段は批判的な態度を取るだけに、聞いているこちらの方がこの傾向は少し気味が悪いと思える。

「それにしても……あそこにもマムクートがいるんでしょう?」

 城の方を見ながら言ったのはホースメン部隊長。

 歩兵部隊長が頷く。

「ただの火竜ではないと聞いているな。その火竜ですら、こちらは願い下げだというのに」

 マチスはペラティ攻略やパレス奪還戦には完全に不参加だった。しかし、マチス隊のおおよその人間はパレス戦には出ていたから、皆の顔は総じて苦いものになる。

「じかに戦わなかったとはいえ、もう姿を見るのも遠慮願いたいですね。あれは人の抗しきれるものではありません」

 ペラティの時もパレスの時もマムクートのバヌトゥや、スナイパーの称号を持つジョルジュ、強大な風魔法エクスカリバーの使い手マリクの力があったからどうにかなったものの、裏を返せばそうした者達でないと太刀打ちできないということである。

「竜殺しの剣があるとはいえ王族の身でそいつらに立ち向かうんですから、マルス王子は凄いものですよ。神剣の王子だからできる事なんですかね」

 血筋、資質、努力、意思。

 そんなものを完璧に要求されるとは伝説を継ぐのも大変なものである。

 そう思いはしたが、言えば荒れるだけなのでマチスは黙っておいた。





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