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「ENEMY IS D」 1-4 |
* 二時ばかりを戦闘と後処理に費やし、再び行軍を始めたのが夕暮れにさしかかっていたため、マチスが最前線に合流したのは翌日の午後になった。 橋を三つ渡り、カシミア方面への備えにアリティアの地方勢らしき集団が当たっているのを横目に通り過ぎてたどり着いたのだが、最前線は最前線で大規模な戦闘を終え、その後処理をしているところだった。 「さすがは黒騎士団といったところだな。他の連中とはわけが違うよ」 戦いに参加していたアリティア騎士はこんな事を言っていたが、結局は大勝しているのだから可愛げのかけらもない。 もっとも、黒騎士団は総指揮の部隊だけであとは普通のグルニア騎士隊だったというから、そういう結果で収まるのかもしれなかった。 「おい、味方が勝ったのにそういう顔することないだろ」 「こんだけ勝っておいて『他とは違う』って言われても、おれにはそう思えねえってだけだよ」 「いや、実際かなり手こずったんだぞ。統制の格が全く違う。そこがさすが黒騎士団の騎士だと思ったんだ。数が同じでも主将がただのグルニア騎士だったら、ああはいかないだろうよ」 「まあ、そうだろうな」 頷きながら、マチスはボルポートと話していた時の事を思い出していた。 率いる人間が違えば、部隊の動きは大きく変わる。 昨日の戦いでは今までで一番多い数の死者が出た。 パレスの時を除いては、被害を最小限に押さえる位置取りを心掛けていたが、今回はそうでなかった。ただそれだけなのかもしれない。 しかし、一度に多くの仲間を失えば指揮官の手腕不足と見るのが普通である。 奇策や限られた状況でなく、正面からの戦いになればこの程度の人間かと思われる事自体には、マチス自身抵抗はない。貴族の血なんぞに惑わされないのならば、それが最善だと思っているからだ。 だとすると、部隊のためにはマチスが指揮官としての能力を上げるか、別の人間に代わってもらうしかない。手っ取り早いのは後者だ。 ミネルバへの疑念を支えにして、この立場に踏みとどまっている身だが、突き付けてくる現実は自分の思考を全て許さないつもりなのかもしれない。 そんな事を考え始めていた。 |