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「BRAND」 2-4






 マチスは今度こそ誰にも邪魔されずに、ひとりきりになった。あの騒動がなければ、もう眠りについていたはずだったのだ。

「もう用済みだと思ってたんだけどな……」

 高い天井の薄闇の中に、呟きが吸い込まれていく。

 マチスが同盟軍に身を投じているのは命を救われたという、その一点に尽きる。戦場に送り込んだ張本人であり、そもそも王族だから嫌っているミシェイルを倒すという目的もなくはないが、どうも現実味に乏しい。別段、指揮官でいる必要は感じていなかった。

 大隊長を辞めると言った理由はもうひとつあった。自分の指揮で大隊の人間を全滅させてしまうのではないかという、危惧と恐怖だった。そもそも、自分のせいで人を死なせたくないのである。この数日間に出た死者にも、申し訳ない気持ちが未だ強く残っているのだ。

 逃げと言えばそこまでだった。しかし、自分の指揮で戦わせることに疑問があり、敵とぶつかるたびに必死に生き残ろうとするだけの日々を皆に送らせていいのか、とも思っていた。

 大隊長を別の人間に代わってもらって、果たしてそれが正しいのかどうかは結果が出るまでわからない。王族を嫌っているのに、彼らを強く慕う者の下につこうとする矛盾と、貴族の血で大隊長を務めながら王侯貴族を否定する矛盾とでは前者の方がまだマシだと思っての決断だったのに、どうにもすんなりと決まってくれない。

「ま、考えても仕方ないか」

 マチスは思索を打ち切って、眠ることにした。





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