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「BRAND」 1-2






 同盟軍がミネルバを信用することになったきっかけは、マルスの発言だった。

 マルスは軍議には出てこなかったが人を限った会議の場には出席し、レフカンディで彼女が撤退した事を持ち出して、信用に値する人物ではないだろうかと発言したのだ。

 レフカンディの戦いは結果的として同盟軍の勝ちに終わったとはいえ、予定通りにミネルバ達の攻撃に遭っていたとしたら、苦戦は免れないものだった。仮にこれを切り抜けたとしても、あらかじめ南の砦に配備されていた急襲部隊に相当の打撃を受けていたはずだった。敵方の予想以上に速く南下してこの部隊を叩けたのは、ミネルバの離脱によって敵方の計算を狂わせたことが大きい。

 そもそも罠を仕掛けるのであれば、レフカンディは格好の場だったわけで、そうしなかったところにやはりミネルバの真意は見えているとマルスは締めくくった。

 これだけなら向かい風の論調に立ち向かうのは厳しかっただろうが、アカネイア王女ニーナがマルスに賛同して後押ししたため、否定論の強い同盟軍の面々はこれを翻し、ディール進攻を決定した。

 そうとなると、今度は戦法を練らなくてはならない。

 最初に上がったのは、アカネイア各地の奪還を進めながら、その途中でディールを取り戻す際にマリアを殺さないようにするという案だった。が、それでは普通に陸攻めをするのと同じであり、そうしている間にミネルバの変心があってはせっかくの好機が無駄になると却下された。

 それではと、本隊が陸攻めでアカネイア解放を進める一方で、ごく少数の精鋭がディールに居るマリアを救出するという案も挙がったが、こちらも採用されなかった。というのも、このまま本隊が陸攻めをしても、パレス・メニディ方面の境に敵の戦力が集中すると、グラやアリティアに駐留するドルーア勢力や、マケドニア本国からの竜騎士団など援軍が後から後からやってきて、結局は押し込まれてしまうだろうという危惧が離れなかったからだ。

 以降の会議の経過を端折って実際に採られた案の詳細を述べると、レフカンディの南出口辺りで解放軍の大勢がしばらくは勝たず負けずの戦をしてアカネイア内の敵を引きつけている間に、三千ほどの別働隊――その実は本命の部隊が海路を取ってディール付近へ上陸、マリア救出の後にそのままアカネイア・パレスへ進撃するというものだった。前者の大将はハーディン、後者の大将はマルスである。

 当然ながらこの策にも異論は出た。そんな少数で、パレスを取り戻せるはずがないだろうと。だが、ペラティで解放軍と合流したアカネイア貴族ジョルジュが、別働隊に同行してニーナと自分の名でアカネイア内の王政勢力を集結させると言うと、反対の声は出なくなった。悠長に議論している暇のない状況も、採決に一役買っていただろう。

 北の大軍に、ハーディンを始めとしたオレルアン勢(かなりの老兵も含め精一杯の兵動員をして、二万である)とアリティア勢からアベル、加えてシーダを除いた全タリス勢。

 南の少数ながらも本隊には、それらを除く人々になるが列挙しておくと、マルスを始めとしたアリティア勢、オレルアンからウルフ、マケドニアとグルニアの降人達、ワーレンで加入した傭兵と僧侶や司祭、他これらに分類されない人々が含まれる。

 数少ない例外としてはダロスが中心となっているガルダ勢だが、こちらは東から南にかけた海域の守備に回ることになった。ディールを陥とした後は更にその範囲が広がることになる。

 こんな様相で同盟軍の九月の戦略は成り、レフカンディで大規模な戦端が開いた十日後、そこに続々とドルーア勢が集まってゆくのを尻目に、解放軍本隊はディール陥落を成し遂げたのである。





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