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「THE CALENDAR」 4-6






 去っていく天馬騎士を見届けながら、先日の食事中に部下を相手に話したのは失敗だったと臍を噬む人物が居た。ロジャーである。

 最近軍内の話題になっている謎の天馬騎士に関して、大部分のまともな兵がその正体について論議するのに対し、

「久々に女の子を見られたんだから、そんなのどうだっていいじゃないか」

と、そんな感じの発言をしてしまったのがそもそもの始まりだった。

 言ってしまった時は不真面目な事を言いやがってと非難されるだろうと思っていたのに、よりによって皆が皆この論調に乗ってしまったのである。それどころか風潮は過熱する一方で、今度はいつ現れるかなどとまるで憧れの貴婦人のような扱いになる始末だった。

 言い出しっぺのロジャーとて、普段からそういう事を考えていたわけではない。長らく辺鄙な所で生活していたから都市での生活がちょっと恋しくなって、そのついでくらいの気持ちで出てきた言葉だったのだ。不遇に苛つき気味だったのを部下達は堪えてきたのに、それを自分のたった一言で崩壊させてしまったのは情けないのを通り越して泣きたい気分になる。

 そんな時にロジャーのみならず重装歩兵隊を立ち直らせたのは、皮肉にも西から来る同盟軍の騎兵だった。効果がほとんどないとはいえ、火矢を仕掛けられれば臨戦態勢に入らざるを得ない。昼の間ずっと続く的外れの――わざとそうしているのだ――矢を躱し続けているうちに士気は持ち直し、彼らが帰って夜になってしまうとまた天馬騎士の話題になって、せっかく上がった士気が下がるという具合だった。

 そこでグルニア軍がワーレンを制圧したという偽の、だが近いうちに現実になるはずの出来事を喧伝したりして、ともかく部下の士気を高揚させようとこちらが試みているのだが、当の天馬騎士が現れてしまってはもうどうにもならない。

 戦場にいるわけだから、戦闘の他にも上官の癇癪や自然の災害などで自分の思い通りにいかない事は山ほどあるし、起こるものだ。

 だが、この事態まではさすがに予測していなかった。

「もう、終わらねぇかな……。こんな戦い……」

 ロジャーがそうぼやいたのも、無理のない事だったかもしれない。





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