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「THE CALENDAR」 4-2






 昼間であるにもかかわらず閉ざされるワーレンの街門を、シーザとラディは固い表情で見守っていた。

 グルニア軍が一万を号しようが、ワーレン勢だけでも決して引けを取らないと言い切る自信はある。傭兵隊の全隊総数とほぼ同じ数だし、何より拠点で戦う強みは大きい。――ただし、海からの脅威がないことが絶対条件だった。現時点では完全にあり得ない贅沢な条件である。

「同盟軍が我々の事を見捨てたら、一巻の終わりだな。
 この間までは、全く逆の立場だと思っていたんだが」

「同盟軍は、約定を違えるでしょうか……?」

「わからん。おそらく、そうする余裕はないと思うが……どうだろうな」

 カナリスを討ったらその首を手にしてグルニア軍を引きつけると同盟軍は言っていたが、これが効く保証は全くない。もしそうなったとして、仮に勝てるとしても戦いは確実に長引く。グルニア軍がこちらに矛先を向け続けて街門が破られようものなら、今まで守ってきた自治がなくなるどころか、略奪と破壊でワーレンそのものが滅びかねない。

 今日七月二二日にワーレン入りしていた同盟軍の兵の全てが船で東の城へ向かったため、数日前に七千人もいた人々は今やひとりもいなくなっている。

「……せめて千は残ってもらうように言えばよかったですね」

「そうだな。物資ばかりでなく、沿岸警備隊までふんだくって行ったんだ。それくらいは言ってやっても良かったな」

 シーザはそう毒づいたものの、代金と賃金はちゃんと支払われる。ただ単に、今の状況では金よりも人の力が欲しいだけだ。

 閉まる街門の扉に内と外から鉄格子が降りるのを見届け、町の中心に帰ろうとしたシーザの足が不意に止まった。

 見慣れたはずの町の景色がいやに遠く見え、それを必死になって眼は焼き付けようとする。

 ああそうか、とシーザは呟いた。

「俺も、そろそろ潮時ということか……」

「隊長?」

「傭兵のくせに大切すぎるものを抱えちまったら、もう寿命なんだよ」

 町のあらゆるものをゆっくりと見回しながら、シーザは身に迫る諦観を自覚していた。

 この町のためになろうとする余りの、死への諦観だった。





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