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「THE CALENDAR」 4-11






 八月二日。ワーレンの街門が再び開いてから六日目の事である。

 シーザが死の覚悟を決めたにもかかわらず街門が破られることがなかったため、彼はちょっとした虚脱感に陥っていた。これでペラティの海賊がワーレンを襲ってくれば少し話は変わったのだが、何故か海賊は同盟軍を狙い、ワーレン周辺はガルダから来た連中が守っているため、陸にいる限りは悲しいくらいに平和である。困っている事があるとすれば、交易の船が近づけないでいる事くらいか。

 詰め所にいるシーザは、鞘から抜かれた剣の刃を眺めていた。

「そろそろこの町を離れて、剣の生活に戻るかな……」

 町のために死んでいいと思った瞬間は、同時に、生きて町のために役に立とうと思わなくなった瞬間でもあった。このまま以前の仕事をしたところで、抜け殻のような日々を送ることになるだろう。

 中にいたラディを呼び、自分の後を引き継いでほしいと告げると、彼は強く否んじた。

「僕は補佐役が合ってます。長にはなれません。
 それはそうと、普通の傭兵に戻ると言っても、どこか当てがあるんですか?」

「いや、特に考えていない。ただ、貰う金が多い所よりも、剣を振るう機会が多い所の方がいいな」

「……死ぬつもりなんですか?」

「そういうわけじゃない。役人みたいな仕事から離れたくなっただけだ。
 そうだ、同盟軍ならいくらでも機会がありそうだな。今の俺には丁度いい」

「なんか……ものすごく心配なんですけど」

「だったらついて来るか? お前は剣の筋がいいんだが、腕を磨く場がないのが勿体ないと日頃から思っていたんだ」

 ラディの眼がぱちりと一回だけ瞬かれる。

「筋……いいんですか? 僕」

「俺にはそう見える。どうだ、来るか?」

 シーザが問うのに、ラディは一瞬逡巡を見せたものの、結局は頷いた。

「はい、お願いします!」





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