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「THE CALENDAR」 3-7






「まさか、これがずっと続くんじゃないだろうな」

 そうこぼしたのは同盟軍騎馬第五大隊の騎馬騎士達ではなく、敵対している側のロジャーだった。

 同盟軍とおぼしき騎兵が西から火矢を放ち、こちらにろくに傷をつける前に逃げ去っていくのは、これで三回目だった。追手を放っても捕らえることはできず、逆に傷を負って戻ってきてしまう。

 ちょっとした焼け野原を作られて、ロジャー以外の隊長格の連中は頭に来たのか、西に向けていた重装歩兵隊を前進させて彼らだけで壁を作らせた。けったいな騎兵が今までと同じ行動を取るなら、あまり近づかずに重装歩兵隊の遥か手前から火矢を放ってくるはずである。

 その読みは当たり、鎧で身を包んだ重装歩兵隊の被害はほとんどなかった。その代わりに追うこともできなかったが、二の舞いならぬ三の舞いを演じなくて済んだのだ。だが。

 それは後方にいるこちらの騎兵連中が喜ぶだけの話で、おそらくは連日火矢を浴び続けるであろうロジャー達にはたまったものではない。もしかしたら、今日追手を放たなかったことで、向こうは手を変えてくるかもしれないのだ。にもかかわらず、ワーレンへと目を向けているグルニア騎兵はお前らだけでどうにかしろとばかりの態度を取ってくる。

 旧アカネイア領の地方駐屯地からワーレンまでこそこそと散発的に集結し、集まったら集まったで、大勢の気配を地元住民にさえ悟られないように、屋内に居るにもかかわらずろくに火を使えず、干し物中心の食事で過ごしてきたのだ。これで鬱屈しないとすれば、余程の強者と言えよう。

 ロジャーは最初から長期戦を見越せていたが、多くの者は山道の前に陣を敷いた時点で、節制の糸が切れる寸前だったのかもしれない。

 そろそろ鎧の中のうだる暑さにも少しずつ慣れ始め、陽が傾くようになるとロジャーは心の内でさえも不平を漏らさなくなってきた。面頬の隙間、西の空にちょっと大きい白い、しかし雲でないものが一瞬だけ見えたのはそんな時だった。

「そういや、天馬騎士が現れたとか、昨日騒いでたな」

 昨日の中天前にグルニア軍の上空に現れた天馬騎士は、飽和気味だった彼らの話題をさらい、ある意味活気をもたらしたと言っていい。それほど、この膠着状態に嫌気がさしていたのである。

 天馬騎士といえば普通のグルニア人はマケドニア兵だと想像する。しかし、中には事情通がいるもので、いやあれはタリスの王女シーダだと推測する者もいた。

 だが、ロジャーにとってはそんな事はどうでも良かった。

「天馬騎士ってことは女の子か……。そういえば、女の子なんてここ数カ月見てないなぁ……」

 郷愁とはまた違う切なさに、ロジャーはため息をついた。





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