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「THE CALENDAR」 3-6






 地上を臨めば、山に挟まれた隘路のすぐ南に同盟軍、北に少し離れてグルニア軍がお互いを睨み合っている。

 替えに用意していた天馬を岩棚で休ませ、シーダは稚拙を承知で羊皮紙にその陣容を描き込んでゆく。当然ながら、同盟軍よりもグルニア軍の方を詳細にしていた。

 記憶と肉眼の印象を取り混ぜて出来上がるのは、方角に忠実に四角く切った陣の南と西を重装歩兵が囲み、その後ろに軍装弓兵、更に後ろに騎兵が陣の北東からひと回り小さい四角を作っている。

 観察の成果が形を取る頃になって、グルニア軍の西の方が少しばらつくのが見えた。距離がかなり離れているから、実際はもっと大きく動いているのだろう。

「あれは――」

 グルニア軍の動きを追って更に西に目を向けると、射手ばかりの騎兵が当たり構わずさわさわと(シーダの位置からはその程度にしか見えない)動いている。その周りは草地と言わず、木と言わず、やたらと燃えてしまっている。

 グルニア軍が駆けつける頃にはシーダの見えない所へと逃げてしまっていたから、あの奇妙な動きをした騎兵はグルニア軍ではないとわかったが、何者なのかはわからない。

「でも、ドルーア軍ではないわよね……」

 となれば、同盟軍の仕業である。しかも、その指揮官の顔を思い浮かべるのにさほどの労力は要らなかった。心当たりはひとりしかいない。

 同盟軍唯一のマケドニア人部隊に接触して、戦況と陣容の情報を渡すのは明日二〇日と決まっている。偵察成果を町に残っているマルスに報告し、それから休むことなく今度は海の方を見なければならない。

 今マチスの所へ行ったとしても、これといって大きな変化をもたらすわけでもないし、作戦を乱してはいけない。

 シーダは天馬に乗ってグルニア軍の弓が届かない範囲で彼らの上空を旋回し、ワーレンへと引き返した。





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