トップ同人活動記録FE暗黒竜小説INDEX>5 THE CALENDAR 2-1




「THE CALENDAR」 2-1




(2)


 以前はアカネイア領だった港町ワーレンは、ドルーアの自治都市になってからも大差なく都市の機能を果たしている。これは、実は希有な事であった。

 暗黒竜メディウスは人間の支配よりも滅亡を望んでおり、本来ならばワーレンも帝国に蹂躙され、壊滅していても不思議ではなかったのだ。だが、ワーレン商人の機転とグルニア・マケドニア両国に制止されるという『人間』の側の都合で、この町は生き残っている。メディウス本人は自らの肉体を維持するためにドルーアから外には出られず、竜人族の支配に抵抗する人間を滅ぼす戦いをドルーア同盟国の軍が代行している弱味もあって、この我儘を聞くことにしたのだと言われている。

 ワーレンの近辺に居るドルーア側の軍隊はグルニアの将軍カナリスの部隊二百で、彼らは港町の監視役として湾に沿った先の東の城から睨みをきかせていた。だが、数の少なさのせいかこの実効性はほぼなきに等しく、ワーレンはドルーアの自治区というよりも、独立都市の実態を勝ち取っていた。

 そういったわけで、同盟軍の本隊七千はレフカンディを抜けて以来、戦どころか小競り合いさえ経過せず七月一二日の中天前(※午前中の意)にワーレン入りしている。反ドルーアを表明したワーレンは積極的に同盟軍を招き入れ、わずかばかりに配置されていたカナリスの兵は、慌てて船に飛び乗って城へ逃げ帰ったのである。

 ワーレン周辺に配置された、ドルーア傘下の軍隊の数が少ないという情報は、六月中旬の時点で同盟軍の手に握られていたが、ここまでうまくいくとは彼らの誰ひとりとして予想していなかった。しかし、ドルーア支配下におけるレフカンディの守りは厳しく、マケドニア王女ミネルバらの戦線離脱がなければ同盟軍は苦戦を強いられ、場合によっては何カ月経ってもワーレンに入れずにいただろう。そういった事を視野に入れると、このあまりにも薄い陣容はドルーアの奢りであると同盟軍は解釈していた。

 しかし、それが間違いだったことを彼らは近々思い知ることになる。





BACK                     NEXT




サイトTOP        INDEX