トップ>同人活動記録>ELFARIA非公式ノベライズ[1] INDEX>1章 水の国カナーナ 4-7
ELFARIA [1] 4-7 * 祝いの花火でも上がりそうな雰囲気の中、『ラの勇者』の八人もそれぞれの喜びに浸っていた。 治療の魔法を使う少女ふたりが手を取り合う。 「やったね、ファーミアちゃん!」 「本当に、勝ったんですね! 良かった……」 ふたりの魔法使いが感慨に耽る。 「見事でしたな。パイン殿も、ジーン殿も」 「我々は良い若者に恵まれましたな……」 安堵ともため息ともつかぬものを、ふたりの騎士は吐いた。 「先ずは第一歩ね」 「そうだな……」 カナーナの剣士ふたりは、喜びの声を耳にしながら剣の刃をぬぐって鞘に収めた。 ジーンが深く頭を下げる。 「パインさん、ありがとうございました。カナまで取り返せたのはあなたのおかげです」 せっかくの礼の言葉も、パインの耳にはあまり入ってこない。 剣を収めた手を見詰め、辺りの歓声をぼんやりと聞いていた。 カナーナを取り戻したことで、これだけの人が喜んでいる。いや、ほとんどの国中の人が喜んでくれているのだろう。 ロマの外に出ると行く先々では常に魔物がいて、人々を苦しめていた。それはもういない。 この手で、その元凶を倒したのだ。 「……なんとなく、最後を譲ってくれた理由がわかったよ」 独り言を呟くパインを、ジーンがいざなう。 「行きましょうか」 ええ、と返してパインは玉座の間を出た。 他の六人の姿を捜していると、フォレスチナの騎士ふたりをみつけた。 向こうもパインとジーンに気がついて、歩み寄る。 先に労いの言葉をかけたのはアルディスだった。 「終ったな、パイン。……あ、いやパイン君」 「パインでいいですよ。さっきそう呼ばれて『信頼されているんだなぁ』って思ったくらいなんですから」 「なら、俺の事も呼び捨ててくれ。帝国と戦う仲間なのだから、遠慮することはないだろう。同じラの……勇者でもあるからな」 最後の方は苦笑していた。勇者という事場に少し抵抗があるようだった。 「カナーナは終わったが、この先もよろしく頼む、パイン」 「こちらこそ、アルディス」 アルディスが差し出した手を、パインは握り返した。 握手を終えて、パインははっと思い出した。 「ヨピナスのとどめを刺させてくれてありがとう。……その、任せてくれた理由がなんとなくわかったし」 「そう思ってくれたのなら、俺としても本望だ。これでこの国の人達から受けた恩が少しでも返せているといいんだが……」 カナーナの人達の喜びは、誰の手によるものでも今は大差ないだろう。けれど時間がたつにつれて、その意義は変わっていく。そこに誇りを見出した時、人々は何かを感じるはずだった。 |