トップ>同人活動記録>ELFARIA非公式ノベライズ[1] INDEX>1章 水の国カナーナ 4-6
ELFARIA [1] 4-6 * 玉座近くから聞こえた大音声にパインとジーンは耳を疑った。 「そういう手に出たか……」 パインがひとりごちる。騎士というものはこんなにも律儀だったのかと、内心で舌を巻いた。 ジーンが駆けつけてきて、 「行きますか?」 そう訊いてきた。 「行かないとしようがないでしょうね」 考えることも、抗議する暇もない。ふたりは走り出した。 パインとジーンが玉座に近づくと、その脇をアルディスとジェニスが駆け抜けていく。 その背中、あるいはパイン達に向かって、ヨピナスが腰を支点に身を起こし、頬を押さえながら風の魔法を詠唱しようとしていた。 それを見て、カナーナの剣士ふたりは玉座に躍りかかる。 その襲撃者に対して瀕死に追い込まれた支配者が取った行動は、腹筋だけを使って勢い良く、跳ねるように起き上がって、巨大な体を突進させてきたことだった。 これに対抗しようものなら、剣は折れ、跳ね飛ばされるかもしれない。その予感がふたりの脳裏をよぎったが、ためらいなく各々の剣は一閃を放った。 ジーンの剣は右腕を切り落とし、パインの剣は頭から体の下を潜るように斜めに斬った。 大量の血を浴びながら、パインはなおも容赦しなかった。 うつ伏せに倒れたヨピナスの背、心臓と肺のありそうな肩甲骨の下を狙って剣を突き立てる。 ヨピナスの絶叫のような断末魔が、玉座の間に響いた。 だが断末魔はすぐに血の流れに遮られ、それも収まりを見せると、ヨピナスの体がところどころで小さく弾け始めた。ごく小さい連続した爆発は天魔僧正の体を隅々まで砕き、かけらは蒸発するように消えてゆく。 それらが全部終ってヨピナスの姿が跡形もなくなった時、玉座の間に押し寄せていた全ての魔物が瞬時にして消えた。 魔物の瘴気も吹き流すようになくなっていく。 玉座の間にいたカナーナ兵士の間から最初に歓声が沸きあがり、それはたちまちのうちに城外へと連鎖していった。 |