トップ同人活動記録ELFARIA非公式ノベライズ[1] INDEX>序章 2



ELFARIA [1] 0-2




 この世界には水、土、風、火の聖地があり、各々に国がある。

 ラの力のもと、四つの国はそれぞれの繁栄を見せていたが、竜の年風の月に勢力地図を一変させる事件が起こった。火の国ムーラニアでクーデターが起こり、王族が捕らえられたのである。

 首謀者はムーラニアの将軍シーラル。魔物を作り出す古代の技術を復活させ、自らも魔物の力を若干取り込んだ。

 魔物の軍隊で国の頂点に立ったシーラルはムーラニアを掌中に収めるだけでは飽きたらず、隣国エルファリアにも戦を仕掛けた。これに対し、風の国エルファリアは徹底抗戦の構えを見せ、加えて簒奪政権の打倒を掲げたのである。

 風の月十日、エルファリア王ジョゼルは王都に兵を集めて檄を飛ばしていた。

「ムーラニアのクーデターを鎮圧せよ! 妃リシアの故郷を救うのだ!」

 壮麗な造りの玉座の間に、兵士達が所狭しと集っている。彼らが王の檄に応える雄叫びは、声の振動で城全体が揺れるほどだった。

 そのさなか、王は彼らの先頭に立つ男に視線を向けた。

 黒みを帯びた灰色の鎧と、青の外套に身を包んだ巨躯。茶色の長髪をなびかせたその男は、この国の将軍だった。

「ダルカン、前線の総指揮は貴公に委ねる。何としても、簒奪者シーラルの首を挙げよ!」

「お任せください! 必ずやご期待にお応えしましょう!」

 ダルカンは胸を張ってそう約束すると、踵を返し、集まっている兵士達を一号の元に率いて玉座の間を後にしていった。

 そんなダルカンの背を見送り、ジョゼルは傍らに控えていた王妃をそっと振り返る。

 壮年の王より十以上若い、しかし威厳を備えていた王妃の面持ちは少しだけ強張っている。

 妻の心境を慮って、王は落ち着いた声音で呼びかけた。

「案ずることはない。我が国の兵は精鋭揃いだ。そう待たぬうちに、ムーラニアの王都は取り戻されよう」

「はい……」

「父君と母君が心配か?」

「いえ……。私は、陛下を信じております」

 慎ましく、だがしっかりと頷いた王妃は、女官を従えて広間を後にしていった。

 先程の熱気の余韻が残る、しかし閑散とした玉座の間で王はひとりごちる。

「魔物……か。手段を選ばぬ輩め」





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