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五 悪夢は引っぱたいて退散させよう



 ヴェルトマーを出発するという時になって、ひとつの騒動が起こった。

 セリス以下騎馬部隊は全員騎乗の人であるために、徒歩のパティとユリアが遅れてしまう。せめてユリアだけでも誰かの後ろに乗せてゆけないかという事だったが、女性はフェミナとナンナしかいない。フェミナはすでに偵察などの別任務を負っているので乗せることはできなくて、ナンナは自分だけならいいが、誰かの面倒を完全に見なければならないとなると不安点がある。

 そこへ、セリスが意見を出した。

「僕とオイフェの白馬は大きいから安定はあると思うよ」

 セリスはユリアをここまで乗せてきた実績があるということで簡単にカタがついたかのように思われた。

 だが、ナンナとオイフェのどちらの馬に乗せてもらおうかと考えていたパティは、隙をつかれてセリスに手を取られてしまったのだ。

 珍しく真剣な面持ちでセリスが言う。

「パティ、僕の方に来てくれないか」

「ユリアを乗せなくていいの?」

 当然の疑問にセリスはスマートに答えた。

「オイフェに乗せてもらうよ。僕より馬術は上だし」

「じゃ、どうしてあたしなの?」

「僕に必要だから」

 明るい中堂々と行われた愛の告白にギャラリーの目が集まる。

 しかし、パティは臆する事なく、セリスに平手打ちをお見舞いした。

 オイフェの顔色が変わるのをよそに、素早くナンナの後ろに乗る。

「そんなこと言ってるから、彼女ができないのよ」

 シアルフィ戦の英雄パティを止められる人物は少ない。

 ……その上、ユリアはセリスではなくオイフェを選んだ事を付け加えておく。





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