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「Noise messenger[5]」5-8





(5-8)


 戦端が開いた一時の後に、マケドニアの王城は解放軍がその主となった。

 これで晴れてミネルバはミシェイルとの戦いに打ち勝ち、マケドニアの解放もこれで完結することとなる。



 ミネルバを讃える歓声を遠くに聞きながら、マチスはぼんやりと日陰で壁に体を預けていた。

 四度目のボルガノンは見事に直撃し、容赦なく生死の淵を漂う羽目になったのだが、その数秒後に城内の戦が終結し、再びの隔癒リブローを始めとした治療や処置のおかげもあって「死んではいない」身となった。

 最後の一撃が父親へ確かに打撃を与えたかどうかは定かでなかったものの、どのみちさほどの威力はなかったらしかった。が、得物がグルニアの祖父から預かった杖だと気づいたようで、その事実の方に衝撃を受けたようだった。

 勝負の余韻などというものは不思議なほど涌かず、座っているのにも飽きたマチスはゆっくりと立ち上がった。

 側にいた者達が安静にしているように止めたが、斟酌しない。

「声も出るようになったし、もうそこまで酷くねぇよ」

 だから気にするな、とひらひら手を振って、すぐ傍の道を折れていった。

 そう言われても怪我人から目を離せないと医療隊員が後を追おうとしたが、マチスが曲がったであろう場所には壁しかなかった。



 それをマチスが見つけ出したのは、本人の申告とは裏腹に意識が朦朧としかけていたからなのかもしれない。

 傍目には何ともない城内の通路の中で巧妙に隠された入り口を無意識にくぐり、不確かな道を歩いていったのである。

 大陸屈指の不可思議を抱く地域特有の不断たる空間を抜けた先で、彼はある相似をもつふたりの人物と邂逅することになる。





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