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「A GRAY SWORD」 1-4 |
* グラの王城には王族が個人的な居室を設けた尖塔があった。 解放軍が城を占拠するようになってから、そこを寝所に定めて時間があれば窓辺に姿を現し、日がな北方を見つめる女性がいる。 この日も下の慌しさを全く鑑みない様子で、寒の戻りの気配がある風に煽られるのも気にせず、彼女は北に伸びる大地を瞳に映していた。 「姫様、お寒うございませんか」 侍女が控えめに尋ねるのにも答えず、結い上げた金の髪を風になびかせたまま、ただただ遠くをみつめるだけだった。 |