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「00Muse」 4-1




(4)


 十月の末をもって、同盟軍はアカネイア・パレスを奪還した。

 マケドニア王女の姉妹が奪回戦の初戦以来に再会したのは、勝利宣言の二日後のことだった。

 姉・ミネルバの姿を目にするなり、マリアはスカートの裾をはためかせて全速力で駆け寄った。そこがパレス内の廊下である事もおかまいなしである。

「姉様! 無事で良かっ……」

 彼女の語尾はミネルバに抱き締められたせいでかき消されている。

 ミネルバは愛しい妹の存在を噛み締めるように抱いていた。

「ごめんなさい、マリア。寂しい思いをさせないと約束したのに……」

 姉の心配に、マリアは明るい笑みで応えた。

「ううん、大丈夫。みんな良くしてくれたし、役に立てたもの」

 その無邪気な言葉が、ミネルバの表情を硬く変じさせた。

「――まさか、町の中に入ったというの?」

「わたしの力で命を救えた人がいたんだもの……苦しんでいる人に応えないのは嫌だったから。でも、その時はもっと厳重に守ってもらったし、わたしはちゃんと無事でいるでしょ?」

 ミネルバはマリアに対して苦笑しながらも、結果的には命令を守れなかったマチスに問い詰めようと考えていた。忠誠を誓ってくれたとはいえ、王女であるマリアを民人と同じように扱うようではまだまだ意識が足りない。元が反王族の人間だからそんな考えなのだろうが、それは改めてもらわなくてはならなかった。

 ミネルバはノルダでの顛末はあまり詳しく聞いていない。知っているのは、騒動の末に大司祭ミロアの娘が保護されたということだけだ。

「ともかく大事がなくて良かったわ。あとは、マチス卿から話を聞くから……」

「マチスさんなら、当分パレスに来れないと思うわよ。姉様」

「来れない?」

「ものすごい大怪我をして、おまけに二回も聖水をそのまま被っちゃったから、しばらく起き上がれなかったの。聖水の影響があって法力の杖で治すのは危険だから、ほとんど自然治癒で。骨も折れていたから、あと十日は休んでいないといけないんじゃないかしら」

「……」

「でも、怪我の功名だって喜んでたけど……何かに出なくて済むとかどうとかって。どういうことかしら?」

 マリアが喋るのを聞いていたミネルバは眉間を押さえた。

 ――度し難い、と彼女の表情が語っていた。





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