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「THE CALENDAR」 2-4






 ワーレンの独自の軍隊のひとつに、傭兵から成る警備隊がある。町の治安を守るために警邏にあたるのが普段の任務だが、東の諸島を根城にするペラティの海賊が襲撃するのに、沿岸警備隊と協力して船に乗り込んで迎撃することもある。

 彼らは一様に組合から雇われているわけだが、組合寄りの者、町そのものの有益を優先する者、仕事だけをこなす者とそのスタンスは様々である。

 屋敷街で思いがけず追跡劇を演じる羽目になった赤毛の若者もまた、ワーレンの傭兵だった。名前はラディ。

 ラディの場合は組合と町の真ん中に立っていて、組合からの要請に応えるのと同時に、組合の豪商に怪しい動きがないかどうかを見張ってモラルを守るという、少し特殊な立場にある。監査と似ているが自主的な要素を孕むから、良くも悪くも仕事以上の意識を持って取り組むようになる。

 この時は警備と称して豪商達の屋敷の周りをうろつき、さりげなく監視するはずだったのに、他の隊が目をつける予定の不審な船乗りに気を取られてしまい、後をつけているうちに、何故か追われる羽目になってしまったのだった。

 四日前から見かける漁師とも海賊ともつかない、だが陽と潮に焼けたガタイのいいこの男は、さまざまな所に出入りしているらしい。中には、口に出して言うのもはばかられる所もあったという。その事から、ラディ達はペラティの海賊に通じている者だと判断していた。

 この男は豪商の所にも入っていたから、もしかしたら豪商達はペラティの海賊ともつるんでいるのでは――そう思ったのがラディのケチのつき始めだった。功を逸(はや)ったという言い方もある。

 もし、尾けられているのがばれたとしても、向こうは煙に巻こうとして逃げていくだろうと思っていたのに、その読みも外れていた。

 追われる立場になったラディは、ともかく今は逃げおおせようという気持ちが強くなり、海賊が尻尾を向けて逃げ出すような場所は、と思考を巡らせた結果、彼の足は同盟軍が宿舎として借り入れている建物の通りへと向かっていた。

 追手の男の気配がラディの背から消えたのに気づいたのは、通りをしばらく駆け抜けた後のことだった。





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