トップ同人活動記録FE暗黒竜小説INDEX>3 HARD HEART(後編) 3-1




「HARD HEART」(後編)3-1




(3)


 天幕で起こされたマチスは目が覚め切らないまま、手と腕の動きに任せて簡単に身なりを整えていた。

 どのくらい眠っていたのかよく掴めていない。寝る前は強烈な眠気に襲われていただけだから、これといって体の調子が悪いわけではない。ただ単純にもう少し寝ていたいと思う程度である。

 あてがわれていた少人数用の天幕から出ると、マチスを起こしたアリティア軍の従者が待っていた。

 すでに夜は更けていたが、見知ったマケドニアの空ではないために、月の位置で時の経過を知ることはできない。眠っていたのはシーダが言っていたように一時なのか、それとも一時以上の時間だったのかはわからなかった。

 見上げた夜空の一点に白い毛ばたきの塊が見える。

 目を凝らしてみると、それは天馬だった。

「あれはシーダだよ。増援が来る前に城を陥とさないといけないからね、天馬を休ませる時以外はずっと上にいてもらうんだ」

 空を見ていたマチスの隣に並んでマルスが言った。

「ずっと?」

「って言っても夜明けまで一時程度だから、そんなに長くはならないと思うけど」

 マチスは愕然とした。

 一時などというものではなく、四時も眠っていたのだ。

 マルスが思い出したかのように言う。

「そうだ、あれからよく眠れた?」

 そんな事を言われてしまっては、まだ眠いなどと言っている場合ではない。

 息を呑んで言ったものだった。

「ひょっとして……もう、策なんてのは考えついている?」

「策ねぇ……。まぁ状況が苦しいのは変わらないけど、できるだけの事はやらないと」

 答えをはぐらかされたような気がしたが、それはお互い様だった。

「できるだけのこと……ねぇ」

 反復すると、何か含みのある言葉のように聞こえる。

「それ、おれがホースメンの人達を説得するのに関係あるわけ?」

「今度の戦いのこと全てだよ。僕がこんなことを言ったらいけないけど、やっぱり今回は苦しいと思う」

 前の騎馬騎士団との戦いの中で、タリス義勇隊の半数が怪我をして多くの者は動かせない。依然としてナイトキラーへの効果的な対策はなく、これらの状況を打開するには軍の戦闘力以外の力も全力で駆使する必要があるという。

 それは例えば、シーダでありマチスであるらしい。

「で、ホースメンの部隊を引きつける方法なんだけど……それは、マケドニア軍の人達がいる所で聞いてきて。僕は僕でやることがあるから」

 そう言って、マルスは離れていった。





BACK                     NEXT




サイトTOP        INDEX