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FIRE EMBREM 暗黒竜と光の剣
「買い出し」
2-7





  
‐ * ‐



 客のない闘技場。その中央に剣士がいる。

 上がってきたマチスはその姿を認めると、剣士の剣の間合いから離れたところで足を止めた。

 客席に近いところにいる審官が、両者に剣を抜くよう促してくる。

 それに従っていると、剣士が訊いてきた。

「――名前は?」

「ここじゃ、名乗るのがしきたりなのか?」

「今日死ぬかもしれない奴の名を訊かないのは失礼だと思ってな。というか、俺の癖だ。
 厭なら構わねぇ」

「別に……」

 最後まで言う前に剣士が俊敏に動き、マチスの剣を叩き落してきた。

 にぃと笑ってくる。

「更に言えば、あんた、お貴族だろ。マケドニアの魔道軍筆頭バセック伯爵の息子だ」

「――」

「祖国から賞金首にされるたぁ、可哀想でならねぇや」

 審官が止めるのも間に合わず、まともに剣が一閃する。が、その刃は横から飛んできた魔道によって、粉々にされた。

 次いで、恐ろしいほどの速さで剣士に向かってくる男がひとり。

「あ!」

 マチスが声を上げると、その男はにっと笑って素手で、しかも一撃で剣士を取り押さえた。

「予定外だったが、意味はあったな」

 その姿は紛れもなくカインだった。

「……なんでこんな所に」

「そんな事を言っている場合じゃないと思うがな。
 こいつは派手にやってきたが、一応暗殺者だぞ」





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