トップ同人活動記録ELFARIA非公式ノベライズ[1] INDEX>1章 水の国カナーナ 3-4



ELFARIA [1] 3-4




 アルディスとジェニスがハンブに行くことを聞かされ、ファーミアは同行を願い出た。

「お願いします! これから東に行くのに、神官様にご挨拶したいんです」

「それはいいが……本当に俺達と共にフォレスチナまで行くのか? 俺が言うのも何だが……今ならやめられるんだぞ」

「お手伝いしたい気持ちは変わっていません。神官様にはお叱りを受けてしまいますけど、もう決めたことですから「」

「そうか……。だったら、来ればいい」

「ありがとうございます」

 ファーミアが礼を述べると、アーバルスもひょっこりと姿を見せた。

「儂も行こうかの。おなごに囲まれてお主だけいい目を見るのは釈然とせん」

「老師……。それはあんまりですよ」

「冗談よ、冗談。気にするでない」

 聖地の村までの道のりは至って平穏で、北に進むにつれて蒸すのが増すのを除けば、快適そのものだった。天気もいい。

 ハンブに着き、視界一面の花畑を越えて神殿に入ると、ファーミアが進み出て中へと呼びかけた。

「神官様、おられますか……?」

「遅かったですね、ファーミア」

 神官は地下から上がってくると、ファーミアの頭にそっと手をかざした。

「大体の事情は察しました。お前には仕える人が見つかったみたいですね」

「いえ、仕えるだなんて……」

「赤き鎧、灼熱の意思。――あなたさまがそうだったのですね」

 神官はアルディスを凝視していた。

「こうして近くで見ると、より一層強く感じます」

 アルディスは面食らったような面持ちになり、内心での動揺があったのか、しばらくしてから言葉を発した。

「本当に、俺なのですか」

「下に降りて、火のしるしを外してみてください。それで明らかになります」

「では……失礼します」

 アルディスが階段を降りてゆき、ジェニスも黙ってそれに続いていく。

 ファーミアやアーバルスは神官が降りてから続こうとしたが、彼は地下には降りずに、ファーミアを見下ろしている。

「水の聖地の巫女であったお前が『火』の供になったのは、命運なのかもしれませんね。不思議なことですが」

「……。申し訳ありません、神官様……」

 他にファーミアから発せられる言葉はなかった。禁忌を破ったのは他ならぬファーミア自身である。こんな事になると予想していなかったとしても、だ。

 しかし今は罰を受けられない。アルディス達についていくことはそれほどに意味のあることだと、ファーミアはそう感じたのだから。

「わたしはお前を罰しようというのではありません。
 『火』は時として、抑えのきかない奔流となり、いつしか自らを燃やし尽くす危険を孕みます。気をつけなさい」

「……はい」

 アーバルスは下に降りず、そんなふたりのやりとりを黙って見守っていた。

「……だから、儂の火の魔法が急に強くなったのは。
 儂も土の国の生まれだというのに、因果なものよの」





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