トップ同人活動記録ELFARIA非公式ノベライズ[1] INDEX>1章 水の国カナーナ 4-4



ELFARIA [1] 4-4




 門が開くのを城壁の所で待っているパイン達に、カナーナ王が問いかけてきた。

「思ったんじゃが、そなたらは二分隊の形を取っておるようじゃな。ただでさえ小隊の数より少ないというのに」

「僕らとフォレスチナの人達とでは、戦い方が違うんです。あと氷と火の魔法を同時に使うと、火の魔法が弱くなってしまうものですから」

「そうか……。難儀なものじゃのう」

「ええ……」

 そう答えたものの、実際問題としてはもっと深刻である。

 パインは簡潔にするためにかなりの部分を省いて答えたが、実はパイン達とアルディス達が同じ場で戦うと、かなりの弊害が出てしまうのである。

 数日前、ロス砦の攻略の最中に戦闘で共闘していた時、アーバルスの火の魔法の威力が落ちるだけではなく、アルディスとジェニスの動きが鈍くなったのだ。

 その時は理由がわからずに、強引に推し進めた。後で色々と検証してみると、どうやらパインの『水』の力が原因だとわかった。ジェニスにまで影響を及ぼしてしまうのはまだ微妙なところだったが、その事実に変わりはない。

 もしかしたら、ジーンがアルディス達に手を貸す分には余り影響がないのかもしれないが、まだ試していないのでどうとも言えなかった。

 しばらくすると城門の方から音がして、門扉が開いていく。仕掛けが押されたのだ。

 パインはカナーナ王に向き直った。

「では王様、行ってきます!」

「よし、儂の枕とベッドを頼むぞ!」

「は……はい」

 今いち気概の削がれる言葉だったが、この人の性格はこうなのだと言い聞かせて、パインは仲間を振り返った。

 彼が一声かけて城門へ走ると、ウッパラー、ラゼル、ジーンが後に続いていく。少し遅れて、王国軍の兵士もついてきた。

 アルディス達の帰還を待たず、そもそも洞窟に行ってもらったのは、彼らにヨピナスと戦ってもらうためだった。

 天魔は『風』の魔物である。そのためには、『火』のアルディスが立ち向かうのが理想なのだ。

 パイン達は玉座の間までの最短ルートを切り開き、そこへ真打ち登場と相成ってもらうつもりなのである。

 それを話した時、当のアルディスは難色を示した。カナーナの解放は、カナーナ人の手で行うべきであり、パイン達がヨピナスを討つのが筋だという。

 効率主義のパインか、国民感情を重視するアルディスか。だが、全ては時の運と言えなくもない。何せ、城の攻略は今までとは勝手が違う。広い場所をひたすら駆け回り、上がったり下がったりする上、城の守りについているおびただしい数の魔物を蹴散らすのだから、とことん忙しい。もしもの時のために、避難用の魔法陣を外に描いておいたが、屋外にいないとそこには戻れないから、使う機会はほとんどないだろう。

 ヨピナスがいるであろう玉座の間は、王城に正面から入ってまっすぐ行ったところにあるが、そこへ通ずる扉は閉められている。外側から開けられない魔法が施されているのにウッパラーが気づき、一同は迂回することを決めた。

 手薄の所、敢えて魔物の立ちふさがる所と攻めていき、階上のバルコニーや城内に組み込まれた武器庫、果てはカナーナ王の寝室と城中の様々な所を駆け巡る。

 そうして結構な手間をかけた末に、パイン達は玉座の間に通じる下り階段を取り囲むところまで来ていた。

「まずヨピナスがいても下手に刺激しないで、扉が開くかどうかそっちを試そう。あと、不意を突かれないように」

 パインの言葉に、三人がしっかりと頷く。

 今のところ、四人とも多少の余力はある。だが、相手の実力を知らない以上、少なからずの消耗を抱えたまま戦うのは危険だった。わざわざそのために分散したのだし、せっかく立てた戦法を崩すこともない。

 階段をそろそろと下り、そこから様子を窺うと、相当離れた玉座にヨピナスはいた。配下の魔物から報告を受けるので四苦八苦していて、パイン達には気づきそうにない。

 四人は大広間の大扉にすかさず取り付いた。

 内側からかかっている魔法の鍵をウッパラーが解くと、大扉が開き、その向こうには後続部隊と一緒にいるアルディス達の姿があった。

 パインが叫ぶ。

「雑魚は僕らが請け負う! だからヨピナスを!」

「……わかった」

 一瞬だけ何か言おうとしたようだったが、アルディスはそのままジェニス達を伴って玉座へと駆け抜けていった。





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