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ユノ攻略 「それじゃ、行きますか」 「行かれますか♪」 ロス砦の東6kmの地点にユノの村はある。 砦と そのおかげか、8人にとってこの村の解放は至極やりやすいものになった。 ロマ組とジーンの4人が隊長探しをしている間に襲撃されたら、フォレスチナ組とファーミアが迎撃する。その後始末はラゼル特製の小袋が活躍した。 今回は「たき火始末用」と銘打たれた「ラの泉」の水が配布されていて、全員が水撒き人となっていた。 聖地が「戻った」影響で、魔物の「ラ」も弱まっている。水がかかっただけでも痛がるほどだった。 パインはこれを面白がり、面倒を嫌うラゼルは上機嫌だった。 大変だったのが他の6人である。 毒の花対策の粉がわずかしか残っていなかったために畑作りをやる羽目になったり、またも現れたリシア像に悩んだり、“エルフの石碑”の写しを魔物のうろつく中でしていたり(解放したらしたで、カナーナ王がとっとと先に行けと言うのを見越しているらしい)と、後始末が楽になってもやる事そのものの労働力はバカにならなかった。 中でも非武装に等しいアルディスは余計な怪我をしないよう治療班及びジェニスから強く言われていたために、動きづらいことこの上なかった。アバの森で発見された「鎧」はアルディスの体には合わず、ジェニスの細槍に“メルド”されたためである。 代用の武器として拝借したのが鉄の棒であったが、やたらめったらぶん殴ってすかさず水袋の中身を魔物にぶちまけるという戦法しか取れない。「騎士」らしくない以前にやりづらいのだ。 いつになったらまともに戦えるのかという事も疑問視の対象である。 「 「 ウッパラーとアーバルスの老師コンビはこの状況の中で比較的元気だった。 よほどいいことがあったのだろうか。 さして広くない村の中を進むうち、一行はある建物の前にたどり着いた。 ちら、と覗きこんでパインは一同を振り返る。 「どうやら あとはよろしく、とばかりに入り口の道を開けた。 そこへ並ぶは絶好調組の二人。 右は氷、左は火炎。はっきり言って反則気味の強さと手段である。 この二人が気の済むまで魔法をぶっ放しきるには少し時間がかかる。 六人は外に円陣を組んで座り込んだ。下手に襲われない用心のためである。 「にしても、どうして風の王妃様の像なんかあるんだろ」 全員にではなく、エルファリアを知る人間に対しての呟きだった。 「リシア王妃か……」アルディスは“知識”としてのリシアを掘り起こしていた。 縁談で結ばれた勇王ジェゼルと理姫リシア。雄々しき王は30代の半ば、理知優れる姫は15歳。 血の多くを失った双王家の取った選択だった。いずれエルファリアとムーラニアはそれぞれの血の結びつきによって併合されることが約束されていたといってもよい。 が、あくまでもそれは政治的見地である。 「――あるところに1人の魔術師がいました。 その魔術師は幼げな面影を残した13歳の姫君に心を奪われました。魔術師はわずか1年の間に様々な手管を使い、王様の元に侍るところまでいきましたが、肝心の姫には手を出すどころか視界に入れさせることすらままなりません。 姫君15のみぎりに婚儀を挙げることになりました。魔術師はその相手を訊き出すことはできたものの、手を出せずじまいでした。愛しい姫君が魔術師の中から逝ってしまうと嘆いてばかりいたのです。それでも魔術師は、相手である隣の国の王様のいる城に向かって呪いのまじないをかけることは1日として忘れることはなかったのです。 婚儀の日、魔術師は王様と姫君の入っていく礼拝堂へ殴り込みをかけました。王様は動じることなく、魔術師をつまみ出すよう兵士に言いました。魔術師は全身ぐるぐる巻きにされて放り出され、式とうたげが終わって一番鳥の鳴く頃にやっと気づいてもらい、魔術師はヤケ酒を飲んだあとに仕え主である姫君の父王の元に帰って、こっぴどく叱られたそうです」 アルディスはそこまで言って口を閉ざした。 パインがじっとその顔を見る。 「それで終わり?」 アルディスがただ頷いて返す。 ラゼルはためらいながら言う。 「じゃあ…………めでたしめでたし、じゃない?」 確信を持たないのは、魔術師の行った事が正義のものかどうかが今ひとつわからなかったからだった。 「王様と姫君にとってめでたかったのは、二人の間に可愛い王子様がお生まれになって、すくすくと成長されてゆき1歳の誕生日を迎えられた辺りまででした。 姫君の この間、アルディスは真顔で話している。 言い方自体はオブラートで包まれているのに、目が冷たい。 無気味である。 「将軍は広大な隣の国が欲しくて欲しくてたまらず、手を出してしまいました。そうした結果が――」 勇王ジョゼルの処刑と王妃リシアの失踪。 「やめよう。どうしたって歴史の講義になる。 つまり、リシア王妃という人は姫君の時分からそういう奴にまとわりつかれていたという事を言いたかっただけだ」 「それにしても……」 言葉を発したファーミアに一同の視線が集まったものの、彼女は続きを言った。 「あの、ずいぶんよどみなく語っていたので、意外でした」 武門のアルディスがそういうことに長けていたのは他の者にとっても同感だった。 パインが更に付け加える。 「昔語りなんてそうそうできるもんじゃないよ。ちゃんと言いあらわせるもんじゃない」 あぁ、そういうことか。アルディスは口の端を持ち上げた。 「その当時では有名な話だった。それを上手く道化師が子供相手に語っていた。口の利ける者ならあれくらいは言える。エルファス中に広まっていたからな」 「それ、いつの話? ――具体的に」 「俺が「勇者」に会ったという話はしたか?」 パインは残り4人の顔触れを確認する。 「僕とファーミアは聞いているけど」 と、途端に空が晴れ上がった。 車座の背後、神殿から呑気な声がする。 「いやー悪いのぉ。勢いで倒してしまったわい」 仕方がない、とばかりに6人は泉の水を入れた水筒を手に立ち上がった。 全く、どうしてこうも元気なのだか。 * 15年前に現れた「勇者」は16人。 そのうちの何人かは たった1日だが、そのサーカスは多くの人々の心を救った。 最も人気を集めたのがその「魔術師の偏恋歌」だという。 「俺もずいぶん後になって知ったが、その魔術師というのはムーラニアの宮廷魔術師でゾーラという奴だった。 さすがに最近の実話だとは思わなかったものでな」 今もなお帝国で雑務をしている男の恋話はひたすら哀れと言う他にない。 「だからといって……無秩序に像を建てる?」 この先いくつ見かけることになるのやら。 「ただの魔術師じゃないからな。お手のものだろう」 アルディスの知る昔話が終わると、現実味たっぷりの話題へと転じた。 |
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